絶望に効くお薬処方箋 漫画家 山田玲司 公式サイト

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コラム 2017.06.23

【第37号】乙女をねじ伏せろ!

先週の放送は20回記念という事で、盟友(ニコ生ヤンサンファミリー)の東村アキコ先生が出てくれました。
ご覧になった方はご存知だと思いますけど、今回もアキコ先生は安定の「大暴れ」をしてくれて、最高に盛り上がった回になりました。
一見「やりたい放題」に見えるアッコ先生ですけど、実はあれも「みんなどうか楽しんで!」という気持ちからの「大サービス」です。
僕は今回、彼女の暴れっぷりに大爆笑しながら、「この人は恐ろしく献身的なエンターティナーだな」と思っていました。
こういう「人を楽しませなければ落ち着かない」という性格が、彼女の漫画を「面白いもの」にしているのだと思います。
そんなこんなで、1周りも年下の後輩漫画家にまたもや勉強させてもらった夜でした。
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今週の感動ワード
ところで、今回の放送で僕が1番感動したアキコ先生の言葉は、「私は乙女をねじ伏せる」という発言と「雑に生きると決めた」という発言でした。
「乙女」って何だ?

この場合の「乙女」とは、「繊細」で「何か素敵な未来を期待」していて、現実を見ない「例のヤツ」だと思う。
もっと言えば「いつか王子様が迎えに来てくれる」と信じている心だ。
「可愛い」とも言えるけど、そんなのは妄想で、問題は現実には「白馬の王子」なんか来ることはない、という事だ。
でも、心の中の「乙女」は「でもいつかは・・(キラキラ)」なんて考えてしまう。
アキコ先生はそんな自分の「乙女」を「豪快さん」になることでねじ伏せてきた、という。
「そんな訳ねえだろ!現実を見ろうりゃー!!(背負い投げ)」という感じだ。
こうすればいつまでも「いつか私を迎えに来てくれる王子妄想」に無駄な時間を取られないですむ。
夢見がちな自分には「あんまりな仕打ち」でも、こうすれば「未来の自分」を救うことができる。
白馬の王子なんか待たないで、好きな人がいたら自分から近づくし、ダメなら次に行く、というわけだ。
「男乙女」とは何だ?
では男にとって、女の「乙女」にあたるものは何だろうか?
ヒーロー? 勇者? 魔法使い? 尾崎豊?
うーん・・近いけどピンとこない。
自信がなくて、繊細で、期待しながらも、今の状況が不満で、それでもいつか僕も(可愛い女の子に愛されてヒーローに)・・・なんて思ってしまう心・・・・。
「いつかきっと可愛い女の子が空から降ってくる」なんて、ラピュタのパズーか!
うん、たしかにパズーになりたいと思っている気分は中々に「乙女」だ。
エヴァンゲリオンの「シンジ君」。
彼も中々の「乙女」を抱えているように見えます。
「嫌なんだよ!」なんて言いつつ、可愛い2人の女の子や綺麗なお姉さんに導かれて「ヒーロー」になりたい、みたいな感じ。
「私なんか!」なんて言いつつ、何人ものイケメンに口説かれる「乙女気分」と大差ない。
この手の漫画やアニメを好きな人には言いにくい話だけど、そういう「漫画やアニメに出てくる夢みたいな話」を本気でいつまでも待っている状況を「男乙女」と言うのだろう。
確かにこうなると、いくら漫画、アニメの世界が素敵でも、いつまでもその世界で「男乙女」を抱えていては、現実は前に進まない。
そしてこの話は完全に「麻酔コンテンツ問題」の話と同種の問題だ。
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麻酔コンテンツが生む「沼」への対処方
そんなわけで、あれだけバカ騒ぎをしながら話をしていたのにもかかわらず、
このアキコ先生のことばは、僕の「麻酔コンテンツは現実をダメにしてしまわないか?」という問いかけに対する見事な答えになっています。
コンテンツがくれる「夢のような時間」は「それはそれ」として現実と距離を取る。
そして自分の中の「乙女」が騒ぎだして「何もしないけど、いつか自分には王子様が・・」なんて妄想に逃げ込もうとしたら「うりゃー」っと豪快にねじ伏せれば「沼にハマったまま」にならずにすむ、というわけですね。
「雑に生きる」の希望
何でも子どもの頃から親が「除菌」してばかりの家で育った人ほど身体が弱いそうです。
O-157の時に感染しなかった子供は家畜が側にいた家の子供だったり。
繊細なのはいいんだけど、繊細すぎるのは生きづらい。そもそも他人は自分の事なんてそんなに考えてないし、見ていない。
なのに「人は自分をどう見ているのか?」ばかりに気を取られて身動きが取れなくなるのもよくある話だ。
これは僕も同じなのでよくわかる。
繊細であれば、人が気がつかない些細な事に喜べるし、物事を深く味わうことが出来る。
でも、その半面「あの人は本当は自分をどう思っているんだろう」なんて考え始めるともう前には勧めない。
前回僕は、「東村アキコは走り続ける女だ」なんて言っていたけど、走るためには細かいことで悩んでいたらダメなのだ。
僕も基本的に「前に向かって走り続けたい人間」なんだけど、いつもいつも「繊細」が邪魔をする。
あらゆることを雑にこなすくせに、つまらないことで「繊細」とか「乙女」が邪魔をして動けなくなる事が多い。
僕ももっと雑に生きたいと思う。
そして、今回のアキコ発言の背後には「東村アキコ」も大いに繊細で乙女だ、という気配も感じる。ふふ。
とにかくみんな大変だったわけだ。
大変だったけど、それぞれにそれぞれの戦いをして、今こんなに面白い大人になって馬鹿騒ぎをしている。実にいい。
こういう騒ぎを「希望のバカ騒ぎ」と呼ぼう。
ちなみにあの日はスタッフも交えて朝まで飲んで騒いで始発で帰りました。ノンストップ、ハイテンションナイトでした。熱の冷めないおっくんはお酒を飲んでないのに夜明けの公園で1人散歩して帰ったんだって。なんかいいね。

山田玲司

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企画編集:山田玲司
矢村秋歩
発  行:株式会社タチワニ
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2015/6/15

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