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コラム 2017.07.10

【第54号】五味太郎の謎の絵本

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山田玲司のヤングサンデー 第54号 2015/10/12
五味太郎の謎の絵本

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「私は私」と「私は変わる」の狭間で

観覧回、熱海回と続いたので、今夜こそ落ち着いた「大人の放送」をしよう、なんて思っていたのですが、どうなんでしょう。
始まってみると、また例のごとく「混乱につぐ混乱」の放送でしたね。
MVPは、なんと言ってもおっくんで、彼の嘘をつけない素直な人間性が強烈に伝わった回だったと思います。
僕の方は、自分の回答の切れ味の悪さに少々反省しておりました。
人間は経験を重ねていくにつれて「これは絶対こう!」とか「私は絶対にこう!」という「絶対」が揺らいでくるものです。
「私は私なのだからこれでいいんだ」という気持ちと「いや、間違っているのは私の方だったのかもしれないぞ」という気持ちが現れてきて、人はその問題の「区分け」をさせられていくわけです。
過去に信じていた考えや、思い込みには、愛着もあるし、そのままでいる方が何かと「楽」なんだけど、そうも言っていられない状況ってのが人生には来るんですね。
そんな時に「まあいいや、俺は俺だし」とか「今までそれで大丈夫だったんだから、別に今のままで良くない?」なんて感じで、変わらない事を選択する率が高い人ほど「頑固者」になっていきます。
その逆で「自分」ってのがまるでなくて、しょっちゅう自分を変えて、ふにゃふにゃ生きている人もいます。
ある程度の柔軟性や協調性は必要だけど、「みんながこう言っているんだから、そっちにします」とやってばかりいると、これはこれで深刻な事態になるものです。
みんなが「身体に良い」っていうから食べていた物や、使っていた薬なんかが、後に「とんでもない毒入り」だったりするのが発覚することはざらにあるし、船が沈んでいるのに「ここを動くな」と言われて逃げられなかった、みたいな悲しい事故も起きてしまうのです。
人は「今の自分は何をどの程度信じているのか?」を、試されながら生きているわけで、その事をいいかげんに考えていると、実のところ「命が危険」なのです。
変える所は変え、変えない所は変えない。それが「哲学を磨く」という事です。
「頑固者」には「受難性」を「自分がない者」には「自分」が必要ってことです。
人の相談に乗るということ
今回、再び「生放送での相談」に答えるというのに挑戦してみて、思ったのは、常に逆の考えや視点がある事に気がついてしまって、即答をするのに躊躇してしまう自分がいる事でした。
「あくまで参考意見として」僕の話を聞いてくれたらいいと思うし、相談なんて聞いてもらえればそれでほとんどの役目は終わっているんだ、というのもわかるんだけど、その場のノリで答えるのにはあまりに真剣な相談が多いのです。
なので、相談者の悩みに関して、本気で自分をぶつけて、同じ熱量で語っていた「おっくん」の姿勢はとても誠実な態度だったと思うのです。
本人はもっとクールに決めたかったのかもしれませんが、「僕も同じように悩んでいる人間なんだ」という態度は、1人孤独に悩んでいる人にはちょっとした救いだと思うのです。
それにしてもです。
僕は僕なりに「相談の本質」とは、聞いてあげる事と参考意見と、具体策を考えてあげて、その最後は「本当はどうしたいの?」と聞いて、相談してくれた人に「自分で考えてもらう事」だと思っているのですが、「その場で即答」ってのは難しいものですね。
五味太郎の謎の絵本が届く

そんな時、我らがヒーロー、絵本作家の五味太郎さんの「復刊絵本」が届きました。
いつもながら、彼の作品はワクワクさせてくれます。
それは「いろの絵本」というシリーズで、全部で6冊。それぞれが「色」をテーマに「あかの本」とか「きいろの本」となっていて、赤であれば「赤信号」とか「消防車」とかがシンプルに描かれているコンセプトなのですが・・・

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この絵本「色の絵本」と言って6冊、つまり「6色の本」なのに、その中に「青」がないのです。
それどころか、6冊の中に「黒の本」と「白の本」が入っているのです。
この背後には印象派時代にあった「黒は色か議論」を感じさせる深い「問い」が秘められています。
モネは黒を使わずに影を描き、ゴッホは「黒は色彩の王」だと言っていました。
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五味太郎氏は、まず「色の代表ってのは、赤、青、黄色だよ」という、「あまり考えていない人」の固定観念を軽々とぶち壊します。
そして、その作品「しろの本」で、「白という色彩の美しさ」を、「くろの本」で「黒という色彩の美しさ」を絵と文字の圧倒的な説得力で見せるのです。
最初に「黒」がテーマに選ばれているのに気づいた僕は「黒がテーマだと、必然的にその他の色が引き立つから、そこが見せ場になるんだろうな」と思っていました。
なのに、そこも五味太郎です。
カラスの絵の背景を黒にしているのです。
白くまの背景は「灰色」です。
五味太郎氏は、何発も読者の常識(考えるのを怠けている脳みそ)を、(粋に)殴って絵本は終わります。
「君はどう思う?白も黒も色じゃないって思う?」
まったくやってくれる。最高だ。
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そんな事を考えながら「しろの本」の最後のページを見たら「画用紙」ときた。
画面のほとんどが「真っ白な世界」。
「君の好きに描いたらいい」と言っているみたいだ。
そこに木漏れ日が絵を描いてきた。なので、ついでに影で絵を描きました。
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こういう即興ならできるのにね。
それにしてもさ。いい先輩がいるってのは「救い」だよね。

山田玲司

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矢村秋歩
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