コラム 2017.08.10

【第85号】ズートピアと童貞処女問題

山田玲司のヤングサンデー 第85号 2016/5/23
ズートピアと童貞処女問題

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どうにも日本人はリアルなSEXをしなく(できなく)なってきたので、この国には「いい年をした童貞処女があふれている」らしい。
そんな話は正直な所どうでもいいんだけど、この「いい年した童貞さん」が言う「僕はあえてしないんです」とか「もう3次元はあきらめました」とかいう「童貞の主張」が面白いのはわかる。
多分そこには「猛烈な自意識対リビドーの泥沼戦争」が生み出した「洗練した自虐的開き直り」があるからだろう。
「その時期」が長くなればなるほど「熟成した自意識防衛理論武装」になるので面白い仕上がりになっていく。そこまではいいんだけど、そういうのを経験者が「上から目線」で面白がっている、という風潮も感じる。
これもまた「なんだかなあ」という感じだ。
そもそも性生活なんてそれぞれ自由に(合意の範囲内で)やっててくれればいいし、本人が「一生ソロでいい」と望んでいるなら、「SEXしないとダメな奴だ」なんていうバブルの頃みたいな同調圧力なんていらない。
とは言え、本音を言えば「いい相手といい感じで出来るならぜひ経験したい」というのが大半だろう。
なぜ日本人に童貞処女が激増しているのか?
前回「選択肢が増えるほど、人は選択をし難くなる」という話をしたけど、この「可愛い子だらけ」「イケメンだらけ」のメディアを観て生きてきた日本人の若者が「普通の人」ばかりの日常生活の中で「最高の相手」を選ぶのは大変だとは思う。
現実にはアイドル並の美少女やイケメンなんかほとんどいないし、いても大抵は「誰かのもの」になっている。
そんなこんなで「アイドル並の相手」をモノにするには、高学歴で金持ちで、見た目が良くて有名でなければならないのだ、なんて思い込みが生まれるわけです。
実際はそういう「スペック」なんか関係なく「素敵な相手」をモノにしている人が多いんだけど、そうなると問題は「自分の人格の問題」になってしまって、いよいよ逃げ場がなくなるんで、彼らはそこは認められません。
ブサイクな男が可愛い女にモテていると「どうせ金持ちだから」とか「有名人だから」とか言って心の平穏を保とうとするので、その浅い理論武装がまた「面白く」見えてしまうんですね。
そんな話をしていたら、ディズニーの最新作「ズートピア」に1つの回答がありました。
ズートピアが解く「呪い」とは?
ディズニーにピクサーの「ジョン・ラセター」が入ってから、ディズニーはもうかつての「古城の役人みたいな集団」ではなくなりました。
内部を見てきたわけではないけど、別格になったのは作品を観ればわかる。
シュガー・ラッシュも素晴らしかったし、アナ雪もベイマックスもかつてのディズニー作品と比べて圧倒的にいい。
何が良くなったかと言えば、ラセターのおかげで「作家個人の想い」が作品に反映されるようになったところだろう。
ディズニーは1940年代から50年代の価値観から抜け出せなかった。古き良きアメリカと言えば聞こえはいいけれど、その多くは白人中心で、封建的、排他的な構造も見られた。
第1期ディズニー改革では、CGを導入した技術革新で、映像的な進化はしたのだけれど、作品は「美女と野獣」や「ライオンキング」などでテーマはまだまだ「いつものディズニー」の枠を出ていなかったように見えた。
ところがここ数年の第2期改革ではそのテーマからして大きく前進している。
シンデレラが「女の幸せは王子(ハイスペック男)との結婚だ」という刷り込みをしたのを、「アナ雪」で開放し、今回の「ズートピア」ではピノキオで描かれた「狐は嘘つき」という刷り込みを開放している。
ラセターは旧世代がかけた「呪い」をアニメーションという魔法の力で解こうとしているように見える。

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今回のズートピアのテーマはズバリ「多様性って最高」というものだった。
時代は不寛容で、多様性よりも小さな村の仲間意識に向かっていこうとしているけれど、ラセターチームは真っ向から「違いを受け入れて仲良く暮らすのって最高なんだ」と言っているのだ。
今回の「呪い」は違いのある相手に対する偏見と恐怖、思い込み、などで、それを克服するって話だ。
そもそも捕食関係(敵対関係)にあるウサギと狐が、互いを理解してバディになるのだ。
これは「男女関係」にも完全に当てはまる。
よく知らないのに「女ってのはこうだ」とか「男ってこんな生き物だ」なんて思い込んでいると、そもそも「分かり合う」なんて難しい。
話を聞いて、友人になって、何か同じ目的に挑戦する(買い物でもいい)ことを繰り返していけばいいだけなんだけどね。
自分と違うタイプの相手とそういう関係になるのは難しいけれど、相手が自分と違えば違うほど信頼関係が生まれた時は面白いものなんですよ。情報もチャンスも増えるしね。
親と学校と地域が作った「呪い」
この国は親の住む地域とそのステイタス(階級)で子供が分けられてしまう。学校ではクラスのグループ、趣味、属性で完全に分類され、あとはもうその「狭い村」で似たような仲間と出口のない人生をやり過ごすことになる。
こんな出口のない世界から出るためには、自分とは違う属性の人間と繋がるしかない。同じ様な仲間とつるんでばかりだと人生は行き詰まる一方だ。
その中で特に大きいのは「男女」だろう。
男にとって一番「違う相手」は女だ。女にとっても男は「完全に自分とは違う存在」だ。
だからこそ、まずは相手の話を聞いて、偏見を克服して、相手を理解しようとしたほうがいい。
何もいきなりベッドに行かなくても、まずは相手が「どういう生き物」かを知って、受け入れればいいだけだ。
でも僕の知る限り「いい年をした童貞処女」の多くが「人のことなんてどうでもいい」という感じで壁を作っていきているように見える。
「わかってくれなければ、もういい」という感じだ。
そういうのも「わかってもらえない環境」が長かったから、人の事を理解したり受け入れたりする余裕がないのかもしれないんだけどね。
まあとりあえずは、恋人にならなくても友達を作ることだと思う。
異性の友人ってのは成立しない、とか言うけど、そうでもないんです。
信頼できる恋人がいるならともかく、シングルの人ほど「異性の友人」を大切にして「呪い」を解いて欲しいものです。
そんなわけで、今週は久世ボナーラも呼んで「中2ナイトニッポン」で盛り上がりましょう。
今週も頑張って「面倒な呪い」をやっつけちゃってね!
ちゃお!
 山田玲司

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企画編集:山田玲司
矢村秋歩
発  行:株式会社タチワニ
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