絶望に効くお薬処方箋 漫画家 山田玲司 公式サイト

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コラム 2017.08.18

【第93号】「モテマニュアル」はどこが劣化したのか?

山田玲司のヤングサンデー 第93号 2016/7/18
「モテマニュアル」はどこが劣化したのか?

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最近、海外に行く仕事が多い人に会うと、ほとんどの人が「日本は世界から完全に取り残されてる」と言っている。
十年以上前には「それでも科学技術の先端国だから大丈夫」みたいなお決まりの楽観論で話は終わる事が多かったのだけれど、さすがに最近はそういう呑気な事を言う人は、テレビに出ているご高齢の方以外にはお目にかからなくなった。
ちょうど10年位前に地球温暖化の問題が騒がれていた時期があって、その時僕は様々な「最先端技術」の関係者さんに取材をさせてもらっていた。
その時に見せてもらった技術は本当に凄くて、特に電気を貯める「蓄電」の技術は圧倒的だった。
もう1方は「非電化」という技術もあって、これがまた素晴らしかった。
そもそも世界中に水車のような電気を使わないテクノロジーはいくらでもあったのだ。
おまけに日本は職人の国だ。本気になれば電気なんか使わなくても快適な暮らしができる技術なんかいくらでも開発できるのだ、という事を思い知らされた。
逗子に住んでいた、元コマツの技術者の人は、ほとんどの家電を非電化製品に変えていた。
驚いた事に冷蔵庫まで非電化で作っている。
詳しい原理はわからなかったけど、放熱の原理を使って砂漠に冷蔵庫が作れるのだ。
「こりゃ、もう少ししたら発電所なんかいらなくなるし、この非電化の技術で再び日本は世界に貢献できますね」なんて呑気に言っていたものです。
ところが実際はそうはならなかった。
当時も今と変わらず、既存の産業の組織構造は政治とマスコミに深く絡んでいて、新しい試みは(たとえそれが正しくても)次の時代の主流になることはなかったのだ。
早い話が「そんなもの電気関連の企業が困るから駄目だ」というわけだ。
どうもこの国の人は「上手く行っていた時期があるとそれが粉々に砕け散るまでそのやり方を続けようとする」という体質がある。
「1度成功したんだから死ぬまでそのやり方でいく」「その他の方法なんか思い浮かばないし、考えたくない」
みたいなのが本音なのでイノベーションなんか起こりようがない。
日本で起きた「イノベーション的なヤツ」のほとんどはその少し前に海外で成功したやり方の後追いだ。
こうなると「ナウシカ」だの「不都合な真実」だのがいくら未来に警鐘を鳴らそうと何も変わらない。
そんな「変わらない国」の新作コンテンツは「昭和の名作リメイク」と一部の熱狂的ファンに支えられた、一般の人には何だかわからない(ガールズパンツァー的な)ものの2種類しかなくなってしまうわけです。
もちろんそんな中でも何とか「次の表現」「次の夢(哲学)」を作ろうと頑張っている人も沢山います。毎度の絶望を抱えて、あきらめずに戦っている仲間もいるし、僕もその1人です。
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モテマニュアルの老朽化
僕は恋愛のマニュアルを扱った漫画で世に出たので、「 山田玲司は恋愛マニュアルの専門家」みたいに勘違いされている事が多いのだけれど、僕はその漫画で「マニュアルの批判」をしていたので、最初から「そもそも人生に(愛に)マニュアルはない」と思ってます。
それでも「どうしたら彼(彼女)ができますか?」なんて聞かれることが多いので、効果のある法則を漫画に描いてきたわけです。
恋愛は人間関係なので「万事これで大丈夫」なんて法則はありません。
「とにかく東大を出て、金持ちのイケメンになって身体を鍛えなさい」なんて言っても、世の中には中卒の肥満男を限りなく愛する女もいるのです。
なのでそもそも「恋愛マニュアル」なるものは「参考資料」だと思って付き合うべきモノです。
女子の語る「男子はこうすればモテるよ」という話にも聞くべき価値はあります。
でもそれはあくまで「アリかナシで言ったら、ナシではないかも」くらいの仕上がりになるというだけの話です。
彼女たちの指導は基本的にこんな感じです。
「清潔にセヨ(風呂に入れ)」
「さっぱりした髪型にセヨ」
「こじらせた服装を止メヨ」
「女の話を上手く聞き出セヨ」
実に実践的で、優しい意見だ。
誰でも出来るし、最低限「こいつはないな」と初見でハジかれる事は無くなるかもしれない。
ところが、男がそれまでに選んできた服や髪型には、それなりの理由がある。
「僕なんか目立ったらダメなんだ」とか思っている男子は、地味な服かキャラ物のアイテムで自分を隠そうとしているのです。
そんな男に「ピンクのシャツとか来ちゃいなよ、かわいいじゃん」とか言っても、拷問です。
少なくとも「女の子の言うとおりの格好」がしれっとできる男は、それなりの自信がある男なのです。
「女の好む男になる」というのは、本当は自分に自信がある男達が、今の女達のニーズを知って、恋愛を有利に進めてやろう、という感覚で、実はこれが出来た男が多かったのは「かなり昔の時代」です。
恋愛マニュアルの何が「老朽化」しているのか?
それはモテない男は「自信がないから話にならない」という問題をあまりに甘く見すぎている点です。
「もっと自分に自信持ちなよ〜」なんて女の子に言われても簡単に「そうするよ」なんて言えないのが現代男子ですからね。
そして女が本当に待っている男とは「自分が想像もしていない世界に連れて行ってくれる人」だったりします。
そうなると女の人が想像できる「いい男」なんて、ペットみたいなものです。
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HG(へっちゃらガール)の破壊力
女の子がモテるにはどうしたらいいか?という件も中々に老朽化している問題です。
男に虐げられてきた弱くて自分のない女は魅力はない!なんて女性が立ち上がって早50年あまり。
女達は弱いどころか、すっかり強くなって男を威嚇しています。
「そんなことないですよ、男が弱いだけです」と言っても同じことでしょう。
女性が綺麗になって、男に対する要求のレベルを上げれば上げるほど、男達は萎縮してしまいます。
重要な点か、彼女たちの多くが「努力」をしている点です。
いい男に愛されると信じて、常に大量の資本を投下して「綺麗な自分」を維持しているので、それだけの苦労にふさわしい「対価」を求めています。
なので、デートの相手が適当なTシャツとか汚い靴なんかだと許せないし、「骨董通りくらい知っておいてよ」となるわけです。
自分に厳しい人は相手にも厳しくなるので、これもまた当然の話ですけど、男はそんな女達の「情念」に怯えて逃げ出してしまうのです。
僕がかつて描いた「ナウシカになれ」と言うのはこれに対応しています。
ナウシカは王蟲にダメ出ししません。全力で受け止めるし、多少の事では動じません。
バーベキューの時に現れた小さな虫に大騒ぎするような弱い女ではないのです。
ナウシカはHG(へっちゃらガール)です。
小さな虫どころか、巨大な王蟲の群れもへっちゃらなのだから、男の夢なのです。
そうは言っても、そう簡単にはナウシカにはなれないので、せめて「多少のことは許せる」くらいの強さを目指す、というのが、最も現実的な「女がモテる方法」だと思います。
男の着る変なロゴのTシャツも、飛んできた虫も、オシャレタウンを知らない男も平気で許せる女。
一方、どんなに変な見た目でも「自信満々」で「次の夢を叶えるための行動を始めている男」というのを女達は待っています。
戦後の歌謡曲やドラマには孤児になってしまった子供達がよく出ていました。
そして彼らは決まってこう言っていました。
「おいら、へっちゃらだい!」
どうしようもない時代に明るく生きていくにはこれしかないのです。
へっちゃらガール、へっちゃらボーイでいこう!
今週も頑張ろうね!
 山田玲司

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企画編集:山田玲司
矢村秋歩
発  行:株式会社タチワニ
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