コラム 2017.08.19

【第94号】いい「トーク」とは何で決まるか?

山田玲司のヤングサンデー 第94号 2016/7/25
いい「トーク」とは何で決まるか?

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「漫画で伝える」のと「トークで伝える」というのは似ている。
確かに漫画家には、「話すのが苦手だから漫画で伝えようとしたんです」という人種も多くて、シャイな人も多いけど、話してみると「トーク」が面白い人が多い。
そういう人は「何がおもしろいのか」が、わかっていて、かつ「それを伝える技術」もあるわけです。
そして、そういう人の漫画はやっぱり「わかりやすくて、面白い」のです。
それはともかく、そもそも、その話が人を惹きつけるかどうかは、どういう部分で決まるのだろう?
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「好き嫌いの話」
僕が知る限りの話だけれど、「飲み会」なんかで交わされる会話の基本は、ほとんどが「これが嫌」か「これが好き」というタイプの話だ。
「あのタレント、ムカつくよね」とか「今の仕事が嫌」とか「Jポップ嫌いなんだよね」とか「あの中華屋の餃子が好き」みたいなヤツだ。
要するに「何が好き」「何が嫌い」という事を感じたまま話しているタイプのトークだ。
何やら人の脳には「扁桃体」という「好き嫌いを感知する器官」があるらしいんだけど、その手の話は基本的に「扁桃体」がしゃべっているわけで、共感はできても面白くはない。
それでも多くの女達は「共感」が目的で会話をしている、と仰るので、それで場が楽しくてストレスが開放されるならそれはそれでいいんだと思う。
でも、そういう話には「知らない世界の発見」も「知的感動」も、ほとんどないので、人との会話に何らかの期待をしてしまう人には、この手の会話は「不毛な時間」に感じるだろう。
おまけに「これが気に入らない」という話は、元気な人を萎えさせる。
「これが好き」という話も、相手によっては萎える場合も多い。アイドルとかアニメとかの話にはこの手のものが多いので、必然的に「同じ村の住人」としか会話できなくなってしまう。
「分析話」の限界
「好き嫌いの話」の1つレベルの上にあるのが「それはこういうことじゃないかと思う」とか「これはこういう関連性があるよね」とか「そもそも、それの源流はこれよね」みたいな「分析話」だろう。
「ポケモン好きなんだよね」とか「ポケモン嫌いなんだよね」みたいな話から、「ポケモンって昆虫採集だよね」とか「あれは西洋文化の植民地政策の流れを感じさせるよね」みたいな話にもっていけると「トーク」の面白さは1段階レベルが上がった感じになる。
つまりは聞き手に「新たな驚き」を与えられる可能性が出てくるのだ。
分析は基本的に「類似性」や「関連性」や「その問題の背後にあるもの」なんかを発見して、独自の解釈をするパターンになる。
これがいい感じだと、その人の話は「面白いトーク」になるけれど、下手をすると「知識自慢」になったり「理屈が過ぎてうんざりさせたり」することもある。
オタクが集まって話をすると、分析がいつのまにか「自分はいかにそれを知っているかバトル」になっていて、これもまた不毛な時間になってしまう。
とは言え、まだ「持論」を展開できる人の話は、単に「好きだの嫌いだの」「痩せたの太ったのだの」見たままの事ばかり言っている人達の話よりははるかに面白いものです。
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本当に面白い話とは?
これは僕の個人的な印象なんだけど「この人の話は本当に面白い」と思った人の話にはいくつかのタイプがある。
まず1つは「本当に自分が体験したこと」をわかりやすく、その時の気持ちの変化も交えて話すタイプ(おっくんの旅の話とかはこのタイプです)
もう1つは、特殊な場所に居ることで、人の知らないレア情報を知っている人の話です。
これは過酷な取材現場が長い「情報誌」の編集者とか、世界中を飛び回っているライターなんかにも多い。
この2つは、いわゆる「体験型」の話ができる人で、簡単にはマネできないけれど、例えば自分が学生だったり、配送関係の仕事をしていたりしても、そこでしか手にはいらない情報や経験はあるだろう。
そこは「観察眼」と「おもしろセンサー」で十分「情報」は手に入れられる。あとはそれを「わかりやすく」伝えるスキルを磨けばいい。
しかし、やっぱり最強なのは「独自のアイデア」を展開するタイプの人だ。
ポケモンの話だったら、自分で新しいモンスターを作ってしまうだけでなく、ポケモンとライオンキングを足したステージを考えだすようなタイプだ。
「ポケモンをシルク・ド・ソレイユでやったら?」みたいなアイデアを引っ張りだしては、主役を小林幸子にしよう、なんて言い出すタイプ。
そんな人はめったにいないけど、僕が本当に面白いと感じる人はそういう「アイデア」で遊べる人なのだ。
だから、僕は常に自分もそういう「アイデア人間」でいたいと思っている。
「これが好き、嫌い」だけではなく、「これはこういうふうに分析できる」だけでもなく、「こうしたらもっと面白い」と、いつも言っていたいんだ!
今回の漫画大賞で感じたことは沢山あったんだけど、本当に面白い漫画は「アイデア」がいい。
アイデアが良ければ、その後の技術的処理はどうにでもなるのだ。
アイデア力はどうすれば身につくか?
アイデアを生む力を育てるには、失敗を許される環境、かつ「変わった事を言っても誉められる環境」にいることが大きいと思う。
周りに「普通ない」とか「あり得ない」とか言ってる人間ばかりいると、アイデア人間は育たない。
もし自分がそういう人間に囲まれていたなら、そういう人間は相手にしないで「普通じゃない(あり得ない)アイデア」を勝手に考えていたらいいと思う。
そして、なにより「もっと面白いアイデアないかな?」といつも考えて、あきらめないことだ。
愛するクリエーター志望の後輩たちに言いたい。
コンテンツもトークも面白くできる。
それは、みんなとは違う「もっと面白いアイデア」を見つけるだけでいいのだ。
これって難しいようだけど、そうでもないのだ。
そのほとんどが、無責任にふざけたこと言っていることから生まれる「遊び」の産物だからだ。
「いいアイデア」を生むために、見た目や学歴や、収入や住んでる所なんか関係ない。
斬新なものの見方、雑多な知識、組み合わせのセンス、遊び心なんかがものを言う世界だ。
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そういえば、例の「シャチとマンボウを合わせたシャチマンボウ」の生い立ちの話をしていて、何だかんだストーリーをでっち上げているうちに、最後はカニとマンボウのミックス「カニマンボウ」が誕生した。
そんなキャラはまだない(と思う)
別に頼まれてもいないけど、面白いから、考える。
さあみなさん。夏です。嫌なニュースばっかりだけど、負けずに明るくいこう!!
カニマンボウー!
 山田玲司

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企画編集:山田玲司
矢村秋歩
発  行:株式会社タチワニ
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