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ニコ生ハイライト 2017.08.18

『カーズ3』は「作ることしかできない」クリエイターたちへの愛でできている!もうひとつの『ラ・ラ・ランド』

 『カーズ3』は「作ることしかできない」クリエイターたちへの愛でできている!もうひとつの『ラ・ラ・ランド』 【8/16ニコ生記事】

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今回は8月16日に放送された有料部分から漫画家山田玲司が『カーズ3』について熱く語った部分をお届けします!

※多少ネタバレあります。

 

 

 

今回の『カーズ』はまさに『ロッキー』!?

 

山田:

『カーズ』シリーズって監督のジョン・ラセターが一番力を入れているんだよね。なぜなら彼が車大好き。『カーズ』という企画自体をものすごく愛している。
今回監督はやってないけど、力が入ってるんだ。で、今回の『カーズ3』を一言で言うと『ロッキー』です!

 

おっくん:

え?まじで!?(笑)

 

山田:

まさに『ロッキー』なんだよ。
『ロッキー』の大きなテーマである「栄光を極め、ピークを越えたあとキツイことになってきた自分をどう乗り越えるのか」というのがあるでしょう。それが今回の『カーズ』にも色濃く出ている。
『カーズ』の主人公・マックイーンの場合はどこに問題があったのか。それは彼の人間性なんだよね。車だけど(笑)

 

おっくん:

はいはいはい。

 

山田:

『カーズ1』を見てダメだ、合わないと思った人けっこういると思う。あの世界観に入れなかった人ってけっこういるんだよね。
合わない理由は色々あるんだけど、前半のマックイーンが嫌な奴すぎるというのがある。

どういう風に嫌な奴かというと、「みんなありがとう」って言いながら、そのみんなは「マス」で顔がないんだよ。
「僕はみんなためにやってます」という風なんだけど、誰も愛していない。一緒に働くクルー達にも何の愛情も持ってないから、みんな辞めていっていなくなる。
そんな中で新しく出会った人達に救われるという話。ものすごく人間的なドラマなんだよね。
そのあたりの成長劇がおもしろいし、ものすごくすっきりする。『カーズ1』は素晴らしい。

『カーズ3』はそれを受けて、さらに深いところまで行ってるんだ。

 

おっくん:

ほう。

 

山田:

頂点まで行ってスターになったけど、ニューフェイスがやってくる。世代交代が始まる。
新しいマシンがどんどん生まれてくる。その新しいマシンに何ができるかというと、完璧なラインどりができる。ぜんぶ計算されているんだよね。そうなると勘と度胸でやってきたマックイーンは時代遅れになる。それを矯正するために、リノベーション的な会社にいって再生しようということになる。そこには最新機器があってトレーナーがつくんだ。そして最新のレッスンを受けるという風に展開していく。
でも、そんなのレースじゃねえよ、と思ってマックイーンは出て行ってしまう。

 

『カーズ』はラセターの車愛が詰め込まれている

 

山田:

この映画の背軸にあるのが「ドライブするって何か」ということなんだよ。
本当に車好きだから分かっている。完璧なラインどりで車をフルグリップさせた状態で、ライバルの車を抜くというのが一番効果的なんだよ。
でも本当に面白い車っていうのは、ギアを流してカウンターをあてるということ。いわゆるドリフトね。作中でも出てくるんだけど、右に曲がるときに左にハンドルを切る。そうするとテールが流れてくる。これがカウンター当てるということ。ダーッて流れながら、調節しながらまっすぐ行く。これ一番ドライブしているぜ!という状態。
マリオカートでも同じなんだよね。ドリフトしている状態が一番早くて気持ちいい。マリオカート作っている連中も、よくわかっているんだよ。

 

おっくん:

うんうんうん。

 

山田:

ラセターは、そこをやりたい。そういう荒っぽいレースにもう一度挑戦したい。だからドライブとは何か。レースとはどんな文化なのか。そういうことをちゃんと言っている。
そして消えゆく車文化に対しても何か入っている。効率的に人を運ぶ「だけ」の機械になろうとしている車文化。
そもそも『カーズ』っていうのは、走るためだけに存在しているのがマックイーンなんだよ。レースで早く走ればそれでいいからライトがない。ライトがないから、ライト部分がただのステッカーになってる。
だから「ステッカー君」ってバカにされる。

 

「ステッカー君」=クリエイターである俺たち

 

 

山田:

これは、まともに日常生活を生きられない人間に対するメタファー。レースに勝つためだけに生きている。
つまり「面白いアニメが作れたらそれでいい」って生きているクリエイターたちにも乗っかる。専門職すべてに対する愛なんだよ。
つまり俺たちはみんな「ステッカー君」なんだよね。ほかのことができない人間なんだよ(笑)

 

おっくん:

なるほどね。

 

山田:

ちょっとおもしろいのが、『トイ・ストーリー』のテーマにも被ってる。
『トイ・ストーリー』のウッディってカウボーイじゃん。カウボーイって前の世代。車の前って馬でしょう。ウッディは馬に乗っている。古いものの象徴だよね。
古いものと新しいものの戦い。ウッディとバズの戦いの構造。それが今回また新しく出てきている。新しいものが現れる。そして古いものが消えていく。
どうするの俺たち?という『トイ・ストーリー』のテーマにもかかってくる。世代交代どうするのかという問題だよね。
今回マックイーンを指導するトレーナーは、明るくてかわいい黄色の車の女の子なの。

 

おっくん:

女の子なの!?

 

山田:

クルス・ラミネスっていって大学出たてみたいな子なの。いい感じで上げてくれるよくできるトレーナー。そのクルスとコンビを組まされるだけど、マックイーンは俺のやり方がある、と思っていて従わない。
この2人が移動中に口論になる。その時、マックイーンは絶対言ってはいけないことを言っちゃう。

 

おっくん:

なんですかそれは!

 

山田:

「君はレーサーじゃないだろう」と。

 

久世:

そんなん言ったらあかんよー!!

 

山田:

そしたらそれまで明るかったクルスがふっと顔色を変えて、トレーラーを降りてしまう。マックイーンはダメなモテ男だから、止め方がわからなくて見送っちゃうんだよね。

 

おっくん:

あー。

 

山田:

実は彼女、レーサーになりたかった女の子なんだよ。
地元じゃ一番速かった。でも実際レースに行ったら、みんなむちゃくちゃ大きくて速そうなのにビビッてしまって、勝負もしないでトレーナーになってしまった。
よくあるでしょ?バンドがやりたいってステージに憧れたけど、一度もステージに上がれなかった人達。そういう人っていっぱいいるじゃない。
これはつまりもうひとつの『ラ・ラ・ランド』なんだよ。

 

おっくん:

なるほどなるほど。

 

山田:

『ラ・ラ・ランド』には挑戦していく過程がある。『カーズ3』はどうなのか?
伏線の回収がむちゃくちゃうまいから、ここまでやるんだ!というラストが待ってる。
続きは映画館でどうぞ!

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