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コラム 2017.08.29

【第103号】「金持ちはみんな死んでしまえ」という映画

山田玲司のヤングサンデー 第103号 2016/9/26
「金持ちはみんな死んでしまえ」という映画

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ヤンサンで面白いのは「何やら面白いことが起こる場所」という「場」が生まれたことでした。
その中で更に僕らに近い場所で色々体験したい、と思ってくれた人が集まってくれているのが、「ゴールドパンサーズ」というサロンです。(手っ取り早く動画が観られるという理由の方も大歓迎ですが)
今月その「ゴルパン」で、僕を含めた参加者がそれぞれ自分のオススメの映画のDVDを持ち寄って、その映画の良さをプレゼンして、みんなで投票して優勝した映画をその後みんなで観る、というイベントをしました。
プレゼンされる映画はマニアックなものから宇多田ヒカルのライブまで多種多様で、中々の盛り上がりでした。
そこで優勝したのがなんと、ジョン・カーペンター監督の伝説的カルト映画「ゼイリブ」でした。
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この映画、一言で言うと「金持ちはみんな宇宙人に魂を乗っ取られているゾンビみたいなヤツだからマシンガンでぶっ殺せ!」みたいな映画です。
主人公は退役軍人で仕事がないマッチョなおっさんです。
その世界は貧富の差が激しく、華やかな都市の片隅で彼は半分ホームレスみたいな暮らしをしています。
ある日彼は教会の謎の組織で「真実の見えるサングラス」を手に入れます。
そのサングラスで街の看板を見ると、何気ない広告が「服従せよ」とか「考えるな」とか「買え」とか「テレビを観てろ」とかの文字に変換されて見えるのです。
面白いのは、バカンスを勧める看板は「結婚しろ」みたいに変わるのです。
特に多いのが「眠ってろ」というメッセージです。
いいですねえー。
そして街にいる金持ちで上品ぶった(演出でそんな感じに見せている)OLやビジネスマンは、醜い「ゾンビ」みたいに見えるのです。
これまた、わかりやすくていいですねえー。
どうやらこの映画の世界では、地球は「どこか遠くの宇宙人の植民地」みたいにさせられていて、人間はもはや自分たちで考えることを放棄させられ、宇宙人寄りの特権階級(ゾンビにされてるけど)以外はテレビなどの洗脳で「消費の奴隷」にされてしまうのだ・・・・みたいな懐かしいノリです。
「まるで少年ジャンプの増刊号に載ってる読み切りみたいだ」なんて言っている人もいました。
「ゼイリブ」ってのは「やつらはいる」みたいな意味でしょう。
後の「メン・イン・ブラック」みたいな「地球にはすでに宇宙人はいる」系の系譜だけど、「やつら」に内包されている裏の意味は「エゴイズム」のことですね。
恥ずかしいくらいの本質。ジョン・カーペンター。最高です。
この映画が作られた時代は1989年。
マドンナが「マテリアルガール」で、私はお金とモノが1番大事、みたいに歌った84年から5年。
始めは「ある種の皮肉」として歌われていた拝金主義もやがて「ガチ」になってきていました。
日本は空前のバブルに踊っている時代です。冷戦は続いていたものの、ベトナムの傷から立ち直ったアメリカは経済的に世界を支配し、清貧ヒッピー文化は過去の遺物となり、それまでの「愛は金では買えない」みたいな時代は終って「結局は金だよね」という時代が始まり、それに疑問を持つのも「古い感覚」とされていったのです。
「ゼイリブ」が笑えない問題
「ゼイリブ」は本当にツッコミどころ満載で、真面目に観ていると着いて行くのが大変です。
予算がないのもバレバレで、演出や脚本にもムリがあり、宇宙人のテクノロジー描写など、ザッツ「B級映画」な部分がてんこ盛りな上に、子供っぽい正義を強引に主張しまくるのです。
なので、基本的に「バカ映画」として楽しまれていたのも納得できます。
観ていた女性の大半は呆れていて、1部の男性は失笑していたのも理解できます・・・でもね・・・。
今回この映画を観て「本気で熱くなっていた男」もいたのです。
その気持ち、わかります。僕も完全に「そっち」だからです。
はっきり言って今の日本は「ゼイリブの世界」みたいなものです。
そして、その流れが始まったバブル時代に僕はなかなかの貧困漫画家でした。
売れないのがいけないのはわかっていても、みんなが「金が全て」と言っている時代に金がないのは荒むものです。この映画をプレゼンしてくれた男性も、かつての僕もそんな「荒んだ若い男」でした。
そしていくら見た目が良くても「お金がある男が好き」と、平気で言ってしまう女性を見ると「深い悲しみ」を感じるのが男です。
当時は「お嬢さん、本当に大事なのはお金だけかい?本当に大事なことを考えようよ」なんて寅さんみたいな事を言っても、所詮は貧乏人の遠吠え。聞いてなんかもらえません。
僕は自分で考えるのを止めさせる「テレビ」なのどのメディアを憎み、会社の金で遊んでる豚野郎についていくメス豚どもが許せなかった「若いオス」だったのです。
ゼイリブはそんな「豚野郎」の仮面を暴き、容赦なくやっつけてくれます。
熱くなっていいんです!
「ゼイリブ」の泣き所
とは言え、そんなシンプルなメッセージ以外「やたらとバランスが悪い」のも「ゼイリブ」です。
特に後半に入る所で入る「長すぎる格闘シーン」はきつい。
サングラスをかけた事で真実を知ってしまった主人公が、友人(労働者仲間のおっさん)に「お前もこれをかけて真実を受け入れろ」と言って勧めるシーンです。
「俺は仕事を失いたくないし、家族もいるんだ、ほっといてくれ」と、強く拒むのだけど、主人公は力技で逃げることを許さない。延々とプロレス的な戦いを続けるのです。
(何でもその主人公の役者さんは、本物のプロレスラーらしい)
とにかくその「おっさんたちの取っ組み合い」が終わらない。
終わったと思ったらまた始まるのだ。
「お前も真実を見ろ!」「いやだ、俺を巻き込むな!」
そんなやり取りを延々と観ていたら、何か色々考えてしまった。
「本当はヤバいことになっているのに、見ていなかった主人公」
「自分の大事に思っている人だけにはわかってもらいたい主人公」
「友達だけには、あいつらみたいな豚野郎になって欲しくない主人公」
「お前だけは自分の事だけを考えるような豚野郎じゃないはずだろ?」なんていう主人公の気持ち。
・・なんだか泣けてくるぞ。
まさにあの頃の僕が、当時の友達や恋人や漫画の読者に「わかってくれ」と格闘していたのと同じ感じなのだ。
原発のこと、ODAのこと、地球温暖化のこと、電磁波のこと、食品汚染やら反戦反核・・愛と理想・・
ひたすら正しくて、ひたすらかっこ悪い話。
簡単には理解してもらえないけど、この人にはわかってもらいたい・・・なんて。
なんだかこれ、僕は今もやっている気がする。
ニコ生や漫画やコラムで僕が言っているのは、本質的に言えば「真実から目を話すな」ってことだし、「俺たちは豚野郎じゃない」「自分で考えていこう」ってことだ。
そうなんだよね。いつの時代も世界中で色んな人達が「眠るな!」って戦っているんだよね。
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さて、いよいよ2周年記念回です。手塚先生の話を徹底的にやるつもりです。初めて観た「エヴァの話」もしようと思ってます。
では水曜にお会いしましょう。今週も人生を楽しんでね!
 山田玲司

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企画編集:山田玲司
矢村秋歩
発  行:株式会社タチワニ
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