コラム 2017.08.30

【第104号】それでも隣が気になる問題

山田玲司のヤングサンデー 第104号 2016/10/3
それでも隣が気になる問題

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太陽の直径は地球の109倍らしい。
そんなバカでかい太陽も宇宙の中ではまだまだ平凡な大きさらしく、宇宙には太陽の1420倍という意味の分からない大きさの星もあるそうです。
もちろんそんな超巨大恒星も銀河系の中では沢山の星の群れの1部に過ぎません。
手塚治虫は、こういう「果てしないこと」を「火の鳥」や「ブッダ」などの漫画で盛んに描いています。
巨大な世界だけでなく、その反対のミクロも描き出し、その上「途方もない時間の流れ」まで漫画で表現した人です。
僕は子供の頃は、そんな表現が怖くてしかたなかったけど、今見ると「そうだよな、自分なんか一瞬で消えてしまう儚い塵なんだから、細かいことなんか気にしないでいこう」なんて思えるので、ありがたい漫画です。
そんな事を描いた手塚治虫先生なら、さぞ「小さなこと」なんか気にしない人だったのだろう、と思ったら、これがそうでもない。
番組で話した「虫プロの新入りの若者」に自分の漫画に感想を聞いて、「古い」と言われては「帰って下さい」と恐ろしく落ち込むわけです。
「人と比べること」が人間を1番不幸にします。
もちろん手塚先生もそんなことはわかっていたでしょう。「人に勝つこと」なんか、果てしのない宇宙の中で「一瞬の塵」である人間にとってはいかに無意味であるか、というテーマを描いていた人です。
そんな、いつかは消えてしまう存在である人間の「苦しみ」を超えて「永遠」へと繋がろうとする物語が「火の鳥」なのです。
そんな物語を生み出した手塚治虫先生でさえ、自分と他人を比べてしまっていたのです。
「そういうのは若い頃だけで、虫プロが倒産してからは手塚治虫も変わったんだろう?」と言うかもしれませんが、伝説の大友克洋に「僕にも描けます」と言ったのは、それからかなりのときが経ってからの話でした。
壮年期に描いた「ブッダ」でも、死にゆくブッダ(30代で悟っている)が、神様(ブラフマン)に「私のことをみんな忘れてしまわないか?」と泣きつくのです。
悟っているようには見えません。「諸行無常はどこに?」です。
そんなブッダに神様は未来を見せて「お前の教えは後世にお経となって語り継がれる」みたいな事を言ってあげるのです。
これぞ手塚治虫です。時空を超えて自分を認めて欲しい人なのです。
なんて信用のできる人なんだ。
それに、本物のお釈迦様(ブッダ)も80歳になっても迷いはあったと言われています。
人と比べたり、高名さに執着してしまうのも、忘れられたくないと願ってしまうのが人間なんだよね。
「わかっているけど、やめられない」って正直に言える人っていい。
人と比べないほうがいい。でも、それができない時もある。
いやー・・いいねえ。
空海と一緒に旅をするのが「遍路」で、その時、傘に書かれているのが「同行二人」なのだけれど、僕が漫画道を行く時の「同行」は手塚治虫がいい。
「僕の方が面白いんです」とか言いながら旅をしたい。いや、ずっとしてきたのかも。
それにしても、かっこ良くて面白い先輩っていっぱいいるよね。
今週の放送は久しぶりに志磨遼平が出てくれるよ!
では、今週もイカれた世界をご堪能下さい。
 山田玲司

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