絶望に効くお薬処方箋 漫画家 山田玲司 公式サイト

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コラム 2017.09.09

【第114号】ゴッホに「あなた売れてませんね」と言った男の話

山田玲司のヤングサンデー 第114号 2016/12/12
ゴッホに「あなた売れてませんね」と言った男の話

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AbemaTVなるものが好調らしい。
ネットで観られるテレビってことなんだけど、まあ早い話が、それまで観てた地上波があまりにつまらないんで、ネットに流れた若者に向けた「テレビっぽい番組」を配信している印象だ。
ニコ生は基本的に「ここだけ(みたいな雰囲気)の話」をするのが売りで、視聴者は「俺だけが知ってる感」を持って送り手との時間を共有する感じだと思う。
どちらかと言えばラジオに近いと思うんだけど、ともかく「面白ければそれでいい」という世界だ。
You Tubeはそれを瞬間的に見せるのが向いてて、ニコ生は同時性と参加性の強みがあって「ライブ」に近い。
ただし低予算で素人が中心の番組作りになるので、どうしても「完成度」が低くなってしまう。
下手をすると、かつての24時間テレビなんかよくあった「深夜のグダグダした放送」みたいになりがちだ。
そういうのが好きな人もいるんで、それはそれでいいんだけど、僕としてはせっかく時間を共有してくれる人がいるのなら、できるだけ「知的発見の喜び」と「楽しい気分」を届けたい。
そんなわけで先週の「女性嫌悪(ミソジニー)と、その先の未来について」という放送は、反省しまくった。
とにかく男たちの「女性嫌悪」は想像以上で、なんなら「女性憎悪」までいってしまっているのがビシビシ伝わってくる。
でも僕ら出演者は、女に痛い目にあってもまだ「女っていいよね」と思っているわけで、こうなると進行はかなり難しい。
「ある程度の整合性や論理性」を元に進めないと、ただの「嫌な感じ」になってしまう。
番組では後半に「ランキングの時代の崩壊が男女を和解に導く」という話にしたので、かろうじて「落とし所」はハマったんだけど、さすがに大変だった。
まあこれが「ヤンサンクオリティ」
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おっと。
話がそれてる。それはともかく、今週その話題のアメーバTVの番組に出てきました。
漫画がテーマのバラエティ番組で、MCは中川翔子さんとアンガールズ、吉木りささん。
登場する漫画家は「ヒロユキ」さんと、なんと僕の師匠「江川達也」さんだ。
なんだろう、この地上波感。全然ネットの感じじゃない。
しかも事前アンケートも細かくて、紹介資料も豊富だ。
MCもベテラン揃いなので恐ろしくスムーズに進行が進んでいく。
スタッフさんもいい仕事をしていて、おかげで楽しくやってこられた。
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とはいえ、どうしても「引っかかる部分」が多々あったんで、ここで書いてみようと思う。
番組は「漫画」に焦点を当てているものの、その中心は90年代のジャンプ作品ばかりだし、取り上げる話題も「漫画の中の変な擬音」や「変な吹き出し」の話などで、どうにも新鮮味に欠ける。
まあこれが「メジャーなメディア」の最適なチューニングなのかもしれないけれど、漫画の世界はここ数年、劇的な変化を迎えていて、今どき「カイジ」の「ざわざわ」の擬音がどうとか言ってる時代ではないのだ。
確かに「わかりやすい番組」を作ろうとしているのは感じた。
「過去の思い出(ドラゴンボールがどうとか)」を共有して楽しい時間を過ごしたい、というのもわかるし、自分だって「ブラックジャックがどうだとか」言ってるしね。
でも、どうしても拭えない「違和感」があった。
どこかの地方自治体の「運動会」の打ち上げにでも紛れ込んでしまったかのような「違和感」だ。
そういう場所には「昔からずっと変わらない人」ってのが必ずいるからだ。
それが1番感じたのは「漫画家って儲かるんでしょ?」というコーナーの時だった。
はっきり言って多くの漫画家が儲かっていたのは20年以上前の話だ。
今はどんなにいい漫画を描いても当時のような「物凄い収入」なんかにはならない。(いるとしてもわずかな人数)
収益が当時の10分の1くらいになっている出版社はザラだし、娯楽の中心にネットがなかった時代とは何もかもが違う。
江川さんはまさに漫画産業の絶頂期に売れっ子だったので、その当時の感覚は知っているし、根っからのエンタメおじさんなので、いつものように「こんなに儲かる」って話をして、場を盛り上げていた。
「やっぱり儲かるんですね」「そうだよ儲かって大変なんだ」「すごいなあ漫画家ってー」なんてやっている。
僕にはそれがまるで「遠い昔の景色」に見えていた。
実は江川さんも漫画産業が終わっていることはよく知っていて、あえて番組のニーズ(漫画家ってもうかるって話で盛り上げる)に応えて当時の話をしているだけだ。
そもそも、本当に「お金」が目的なら、漫画家なんてものはコスパが悪すぎる。
たとえ大ヒットを出したとしても、売り上げの桁が当時とは違いすぎるし、ヒットの確率も低い。
なのに漫画に挑戦している間は「心身ともに過酷な生活」になってしまう。
そんな状況なのに、今も漫画家をやったり、目指したりしている人たちはどんな人たちなのか?と言えば、そもそも「夢の印税生活で大金持ちになれる」なんてまず無理だとわかっているのに、それでも漫画を描いている人たちなんだよね。
なんで漫画なんか描くか?と言えば「好きだから」の1言に尽きる。
好きだから、不器用と言われようが、不安を抱えようが努力を止めない。そういう人たちが「今の時代の漫画家」なのだ。
なので僕は「今漫画を描いている人」を無条件で尊敬してる。
そんな時代に相変わらず「漫画家って儲かるんでしょ?」なんて言われると「え、まだそんな事言ってんの?」と思っても仕方ないだろう。
そりゃあ金は必要に決まってるし、それが多ければ自由も増えるし、稼ぎたいのは当然。
でも「ほとんどの漫画家」が「金がいいから漫画家やってるんじゃない」って思ってる。
漫画産業の絶頂期の時でも「漫画家って儲かるんでしょ?」なんて言われたら、ほとんどの漫画家が怒っていたし、「何万部売れたから凄い漫画家」なんて言い方にもうんざりしてたものなんです。
僕らは商社マンでも株屋さんでもないんでね。
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番組の流れでMCの人が僕に聞いた。
「 山田さんだって儲かっているんでしょ?」ってね。
なので、思いっきりカッコつけて言った。
「金のために漫画描いてるわけじゃないんで・・・」
あはは。
よくある例えで申し訳ないんだけど。
生前1枚しか絵が売れなかったゴッホさんの絵は、今53億円で売買されている。
彼が生きている時に「あなた売れてませんね」とか言った人もいただろう。
でも、そんな事を言っていた当時の人の名前を誰も知らないし、その人の話もしない。
でもゴッホの話はするのだ。
ゴッホの絵が今でも人の心を震わせるからだ。
その価値がいくらになるって?
値段なんかつけられるもんかw
 山田玲司

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企画編集:山田玲司
矢村秋歩
発  行:株式会社タチワニ
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