絶望に効くお薬処方箋 漫画家 山田玲司 公式サイト

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コラム 2017.09.24

【第129号】「幸せ」の正体

山田玲司のヤングサンデー 第129号 2017/4/3

「幸せ」の正体
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いやいや。
まだ「エヴァ酔い」が覚めません。
まあ、庵野秀明という人に会えたような体験だったので、面白かったんですけどね。
基本的に庵野監督の「壮絶な鬱」が覚めやらぬまま、監督の大好きなものを全力でぶつけては、すべてを「マイナス方向」へ導いていくのが「エヴァ」で、それは90年代の「浮かれた雰囲気」に嘘臭さを感じていた、当時の人達に「リアル」だと感じられて共感を呼んだのも分かりました。
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でね、同時に「良い事言ってるヤツはみんな偽善者だ」っていう、「意識高い系叩き」の流れもこのあたりから始まるんだなあ、なんて思っていました。
僕は理想主義者です。
問題はいくらあっても多様性のある世界は実現したいし、幸せな「循環社会」も、国がない世界も、貧富のない世界も諦めていません。
そんな事を言うと、とたんに「お花畑」とか「スイーツ」とか「意識高い系」とか言いたくて仕方ない人達に意味のない挑発をされるだけなので、普段はそんな事を言いませんけどね。
そもそも「理想」なんかを語れる人は、元々「恵まれている人」だからです。
エヴァに出てくる人は「理想」を信じられるほど、心に余裕がありません。
「自分を認めて(愛して)欲しい」という思いでギリギリの状況なので、見えてくるものは、自分を批判する人の目ばかりになってしまうのです。
これは切ない。
では「庵野秀明は理想主義者か?」と言うと、彼もまた「理想主義者」だと思います。
本当の理想主義者だからこそ、あれほど現実に失望できるわけだし、それをアニメというコンテンツにして世の中に出してるわけですから、「この思いはみんなに伝わる」と、どこかで信じているわけです。
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高すぎる「夢」や「理想」は、現実を「最低な場所」に見せるものです。
僕もまた「高すぎる理想」を抱えて、若くて健康でやりたいことに燃えていた20代の日々を「最低な毎日だ」と、鬱々と過ごしていた「愚かな若者」でした。
バブル景気で世間は浮かれまくっているのに、行ったこともない国の戦争に憤って、止まらない砂漠化だのODAや原発の欺瞞なんかに苛立って、そんな気分に、お約束の「自分を認めてくれない社会」への苛立ちを重ねて苦悩していました。
とは言え、「理想がある」ってのはいいものです。
僕の場合「漫画で世の中を良くしたい」という理想(夢)があったので、そこに向かって努力していると、人生は「充実」していくのです。
もちろん簡単に「結果」なんか出ませんから、そこはもう「虚しさ」との戦いになるんだけど、「やるだけのことはやった」という思いがあるので、それ以上自分を責めなくて済むんです。
「自分はやれるだけのことはやってる」という充実感と、少しの「結果」があると、「自分はそんなにダメじゃない」と思えてきます。
そう思えるだけで、何もしなかった頃よりも「現実」の見え方が変わってきます。
あれだけ「クソみたいな世の中だ」と思っていたのに、「そんなに悪いことばかりでもないかも」なんて思えるようになるのです。
「夜明けの空が綺麗」とか「昨日は咲いてなかった花が咲いてる」とか「あの人、妊婦に席を譲ったな」とかね。
そのうち「こんな僕の話を聞いてくれる人がいる」とか「自分の手はまだ動くじゃないか!」とか「まだ目は見えるじゃないか!」なんてね。
要するに「持っているものの素晴らしさに気がつく」って流れが待ってるんです。
そして「幸せ」は「目標に到達した時のみに手に入る」という考えが「間違い」だと気がつく流れも待っています。
毎年何かしら「新しい出会い」はあるし「いい人」にも「いい事」にも出会うものです。
それがない時期でも「温かいスープ」は飲めるし、「素敵な映画」も観られます。
好きなミュージシャンの新譜は出るし、そのミュージシャンの憧れだったミュージシャンのアルバムにも出会えたりします。
気になる「B級グルメの店」にも行けるし、きつい仕事の後には「気持ちのいい睡眠」が待っています。
たまたま同じ時期に出会った気の合う人達とバカな話で笑っている。
そういう「日々」が「幸せ」の正体です。

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そんな事は最初から分かっている人もいますけど、これが案外難しい。
「有名になって、大金持ちにならなければ幸せではない」なんて思ってしまうものですからね。
気分の悪い時は、理想のハードルを思いっきり下げましょう。
布団から出ただけでも自分を讃えましょう。
やれることはやりましょう。
では、今週も楽しくいきましょう。

山田玲司

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企画編集:山田玲司
保田壮一
発  行:株式会社タチワニ
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