コラム 2017.09.27

【第132号】「ありのままの自分」なんてみっともない?

山田玲司のヤングサンデー 第132号 2017/4/24

「ありのままの自分」なんてみっともない?
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ミッツ・マングローブさんが昔ラジオで言ってたんですけどね。

ミッツさんのお母さんは「ありのままの自分なんて冗談じゃないわよ、みっともない」みたいな事を言っていたらしいです。

僕はこの話が好きで、その理由は、最終的には「私は私」なんだけど、誰かといる時は、その場にふさわしい人になって振る舞わないと「品がない」って事をミッツさんのお母さんは言っているのだと思うからです。

~「ありのまま」が許されない国~

とはいえ、この国の人達の多くは「そういう高貴なステージ」にはいません。

なぜなら、自分の子供に「自分の理想」を押し付ける親が多いので、「品のある振る舞い」をする以前に「心の問題」が解決していない、という、まあいつものやつですね。

「本当の自分」なんてものは、大抵は「どうしようもない部分」を含んでいるものです。

そんな「どうしようもない自分」でも、生きていく価値はあるんだ、なんていう、根本的な「自己肯定感」さえあれば「誰かのための演技」なんてものもできると思うんですが、これが難しい。

「そんなの自分らしくない!」とか「そんなふうに男に媚びたくない!」みたいな、まあ言ってみれば、「他人に合わせるという心の余裕がない」って事でしょう。

「100万回生きたネコ」という絵本では、「誰かのための自分」であるネコが、「そんな生き方を何度しても自分は不幸だ」と言っています。

そんな人たちの気持ちを拾ったのが「アナと雪の女王」の「ありのままで~」だったのでしょう。

「誰か(親や世間)のために我慢しなさい」と言われて育った人達の「反動」が、「ありのままの自分で生きる!」とか「そんな自分をわかってくれる人じゃなければ無理!」なんていう気分を作っているんだと思います。

アナ雪は「誰か」のために理不尽な我慢を強いられていた人達の「私はもう誰かのために我慢なんかしない!」という宣言だったわけで、それは支持されるものわかります。

ところが、この「ありのままの自分でいい」っていう生き方は、こと「恋愛」とは相性が悪いのです。

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~「私のための男」「私のための女」は存在するのか?~

「どんな人がタイプなの?」と聞くと、「私のことを理解して受け入れてくれる人がいい」と答える人は沢山います。

そりゃあそうです。僕だってそうです。できれば「ありのままの自分」を受け入れて欲しいものです。

でも逆に相手に「これ」を望まれて、それができるか?と言うと、ちょっと難しい。

相手が「超イケメン」とか「超美女」だったら出来る!なんて思うかもしれないけど、人間の本当の「ありのまま」なんて「赤ん坊」みたいなものですからね。

その時の「寂しさ」やら「リビドー」なんかに負けて、相手の「ありのまま」を何でも受け入れる!とか思っても、そんなものは長くは続きません。

中には財力やら権力の力で、相手の欲求の多くを満たせる相手ってのはいるかもしれないけど、本当の意味で「100%自分のために行動してくれる相手」なんてのが存在するとは思えません。

~「どうしようもなさ」の見せ方~

「恋愛」ってのは、男女それぞれが、内面に「どうしようもない自分」を抱えつつ、それを抑えながら「相手にとって素敵な人」を演じる、という行為でもあります。

本当は自分も寒いのに「大丈夫?寒くない?俺は大丈夫だから、このマフラー使えよ」なんて言っちゃったり、彼が「長い髪が好き」って言ってたから頑張って伸ばし始めた、とか、そういうのが「恋愛」という行為の「愛しいところ」です。

相手に合わせて自分を多少抑えたりするのも「負け」ではないのです。

そもそも「恋愛」が男女の戦いだと思っているうちは「心の平和」は遠いものです。

「相手の理想の人」なんかを演じつつ、ある程度信頼関係が出来てから、自分の「どうしようもなさ」を少しづつ見せていけばいいんだと思うのです。

「相手にとっての自分」は本当の自分と違うのは当たり前で、多少その辺を譲歩するくらいの余裕は欲しいものです。

バカみたいだけど、僕は「君にふさわしい男になるよ」なんてセリフが好きです。

本当は女は天使なんかじゃないし、男は王子様でもないです。

でも、相手がそんな夢を見ているなら、少しくらい「相手の望む天使」とか「相手の望む王子」になる努力をしてもいいと思うんだよね。

男の心の中にいる「天使」や、女の心の中の「王子様」ってのを「そんなもんいねーよ」と言ってしまうより、「私がそうです」なんて言ってしまう方が面白いし、人生の色彩が豊かになる。

「僕は君の王子になる」なんてやせ我慢している男の「どうしようもないところ」が見えてしまっても、女の人は「そこがいい」とか言ってくれたりすることもあるんだよね。

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~年上の義務問題~

この話は他の人間関係にも言えます。

「先生」や「親」や「上司」なんかは特にそうで、年下の人にとっての「理想」を演じるのはとても大事です。

トラブルがあって、自分がパニックになっていても「大丈夫、俺がなんとかする」と、冷静に対応するのが、年下の人の「理想」です。

「そんな理想、勝手に押し付けるな」と思っても、そんな態度を出してはいけないのです。

そこで「堂々と無理できる人」について行きたいのが年下の人たちの本音ですからね。

そう言えば、手塚先生はいつも子供に「大丈夫、俺がなんとかする」と言っていた、ってるみ子さんが言ってましたね。

さすが手塚治虫!愛されるわけですよね。

とはいえ、本当の自分も大事なんで、その辺ご無理は程々に、春の終わりをお楽しみ下さい。

山田玲司

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