コラム 2017.06.08

【第22号】「がっかり」ばかりの毎日で期待しなくなるのを阻止するために

どうにも空気が悪い。

実際の空気も汚染されていて最悪なのだけど、この国の人たちの空気(気分)が本当に荒んできているように感じる。
「この先はろくなことがない」という気分や「どうせ夢なんか叶わない」という気分の中で生きていく時代なのだから仕方ないとは思うけど、若い人にまで「がっかり」の空気が漂っているのは気の毒で仕方ない。
幼児の頃だけは「君たちは何でもできる」と言われるけれど、小学校の高学年にもなると「夢なんか叶わない」となるのが今の学校らしい。

いつまでもサンタを信じてる子供をバカにするように「僕は僕のやりたいことをやって生きていくんだ」みたいな「夢」を語る子供を「バカじゃないの?」と見下す空気が支配していくからだ。
そして、中学生にもなると定番の、夢なんか叶えられる人なんか1%もいないんだから、早く現実を受け入れて「収入が高くて安定していてそこそこ楽な仕事」に就くための努力をしないやつはバカだ、となる。

悲しい話だけど、これはある部分に関しては「本当の事」だ。

大人気の「声優」という仕事に関して言えば、毎年声優になれる人が沢山いて、その数と同じだけのベテラン声優さんが引退しているわけではない。

枠は限られていて、圧倒的な数の人たちが夢敗れていく。漫画家にしてもミュージシャンにしても同じことで、「誰もが夢を叶える」というのが嘘なのは当然の話だ。

こんな当たり前の事にも気づかないのは「バカ」だというのが今の社会を支配している空気なのかもしれない。
「人は優しいか?」という話でも同じような事が言える。

優しさに対して優しさで応じてくれる人もいるけど、本当にいじわるな人も沢山いる。

誰かが嬉しい思いをしていると嫌な気分になるのも人間だ。
とにかく経済が疲弊して格差が広がると「悪い部分」に目がいってしまうのが人間だ。

「がっかりすること」ばかりが続くと、何にも期待しなくなっていく。

「がんばったってどうせ無駄」という気分になる。ルサンチマンというやつだ。
この国に漂う「がっかり空気」はひどいレベルに達している。

そういう空気(気分)に負けるとどうなるか? まず、笑わなくなる。

笑うとしてもそれは「嘲笑」だ。「どうせ無駄なこと」に一生懸命になっている人間の「無駄な努力」や「理想」なんかを「バカなやつ」とあざ笑うだけの笑い。
そしてそれは「たいした人間でもないくせに人を見下している自分」にも向けられる。

そして自己嫌悪と他者への侮蔑で日々は「暗澹」とした色に染まる。

そんな人に「明るくて楽しい人」は近寄らない。近寄ったら「バカ」だと言われてしまうからだ。

じゃあ、そんな「がっかり」の人を僕は否定してるかといえば、そうでもない。

気持ちはわかるからだ。
僕も何度もそういう「がっかり」をくらって笑えなくなった事があるからだ。

どこかで期待しているからこそ「がっかり」はこたえるのだ。

そしてそんな「がっかり」に負けて周りを暗くしてしまうと人生は、増々「耐え難き日々」になっていくのだ。

つまり、ダメな気分が「大丈夫なこと」や「やれるチャンス」までダメにしてしまうのだ。
だけど、1つの夢が叶なわなかっただけで、他の可能性まで台無しにしてしまうなんてどうかしている。

ましてや、他の誰かの「がっかり」のせいでダメになるなんて簡便して欲しい。

では、「がっかり」の対処法とはどんなものだろう?

僕を助けてくれた歴代アシスタントの中に、仕事の初日に必ずボケをかまして入ってくる男がいた。

変なギャグ(主に放送禁止のシモネタ)を大声で叫びながら入ってくる。

彼が来る何日も前から漫画を描いてクタクタな僕はその一言に救われてきた。

早い話、仕事場が一気に明るくなるのだ。
もう1人、僕の40年来の親友の「稲葉」もそうだ。

機嫌が良いと踊りながら入ってくる。機嫌が悪いと「自分がいかに最悪か」という話でみんなを笑わせてくれた
絶望に効く薬の取材でも会うなり「ボケ」をかまして笑わせてくれた人が沢山いた。

河合隼雄先生もそうだった。瀬戸内寂聴さんもクタクタなのにいつも笑顔で迎えてくれた。

僕の祖父や祖母もみんなそうだった。

彼らは「すべてうまくいってきた人生」を歩んできたわけではない。

でも、彼らは自分が泣きたくても、相手のために「笑う」のだ。

誰かを「嘲笑」する笑いではない、相手を開放する笑いだ。
「現実は厳しい」なんてみんな知ってる。
「人は平等ではないこと」も「ほとんどの夢や理想が儚く散ること」だってわかってる。

だからこそ「笑う」のだ

そして「夢みたいなこと」を相変わらず言うのだ。

「理想」を語るのだ。
僕はこういう人が1番かっこいいと思う。

若い人は「知らないこと」が多くて怯えている。最悪な未来が来ると思っている。

年をとることは「失うこと」と「終わっていくこと」だと思っている。
そんな人に1番勇気(パワー)を与えられるのが「がっかりに負けてない年上の笑顔」だと思う。

もしも「がっかり」に負けそうな時に年下の人に会ったら、無理にでも笑っていて欲しい。
それこそが1番の「年上の義務」だと思う。

そしてその「やせがまんの笑顔」はあなた自身を照らす時がくる。

「現実はそんなに甘くない」と言うものわかる。

でも、まだこの先も生きていくなら「自分の心」も「周りの人の心」も暗く(がっかり気分に)させるのは止めよう。
「自分が周りを照らすこと」が「がっかり」に負けない最高の方法なのだ。

そしてそれは「外交」にも言えると思う。
「理想論?」

そうです。僕は死ぬまで理想論を語るバカな男で生きます。笑いながら行きます。
山田玲司

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メルマガ発行日 2015/3/2

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