【第211号】「音程」って何だ?
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おことわり:このコラムは、ニコニコチャンネル「山田玲司のヤングサンデー」で配信されているメルマガを全文転載してお送りしています。転載期日が2018年4月下旬以降の号は、テキストのみを抜粋・転載しております。
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またしても「自分」に呆れている。
何かと言うと、バンドの話。
僕は「ヤンサンフェス」にバンドで出るので、その練習に行ってきたのだ。
ようやく夢が叶って、おっくんと一緒に「アリス」を歌うのだ。
僕にとって「アリス」ほど自分の「リアル中2時代」を象徴するバンドはない。
ネタ的な意味での中2ではなく、自分が本物の「中2」だった頃、ハマっていたのがこの「アリス」のカバーだった。
3人のおっさんが低い声で「ダンディ」に愛や苦しみや「優しさ」なんかをを歌うバンドが「アリス」だ。
ダンディには程遠い埼玉の田舎の中学生が「それ」に憧れる意味がわからないのだけど、とにかく当時(80年代初期)の中学生はみんなアリスにやられていた。
今思えばかなり妙な世界観だし、サウンドもベタなアリスだけど、とにかく「おっさん」がかっこつけているのがいい。
アリスは「Beatlesフォロワー」なので、それぞれのボーカルに見せ場があって、やたらとハモる。
そんなわけで、当時の僕は覚えたてのギターで友人と毎週のように「アリス」を歌っていた。
そんな思い出も「MTVの襲来」やら、ブルーハーツの登場やらで、遥か遠くに行ってしまっていた。
この話は何度か書いたけど、ここで改めて書きたい。
震災前の2010年。
取材で当時の毛皮のマリーズの志磨遼平に会い、彼に「おっくん」という人間を紹介された。
おっくん本人に会う前に、志磨遼平のラジオになぜか出ていた「おっくん」の声を聴いた。
単なる故郷の友人が堂々とラジオに出ているのも面白いけど、この時おっくんは志磨遼平に向かって「マリーズは解散せえ!」「これを聴け!」と言った。
何を志磨遼平に聴かせたのか?
それが「アリス」だった。
その瞬間僕は「こいつ面白い!!!」と思って、おっくんと会う事にしたのだ。
要するに「アリス」が俺たちを繋いで「ヤンサン誕生」になったのだ。
そして、現れた「おっくん」は、ご存知の通り、B’zだの少年チャンピオンだのが大好きな「超絶ベタ男」であり、同時に完全に時代から外れた「明治時代の蘭学者」みたいな男だった。
そんなわけで、彼と一緒に「ヤングサンデー」を始めたのだけど、どうせならこいつといつか「アリスを演奏したい」と、ずっと思ってきたのだ。
そんなこんなで、ゴルパン音楽部のみんなに協力してもらって「アリス」をやることになった。
しかし、せっかくのアリスなのに、連日のハードスケジュールで体はボロボロ、おっくんも風邪をひいている。
その上、更にアレンジを独創的にしたものだから大変な事になっていた。
それでも僕はこの状況が嬉しくて、スマホで演奏を録画していた。
帰ってからその動画を観て愕然とした。
自分の音程が信じられないほど外れている。
もはや演奏そのものを台無しにするレベルで音が外れているのに、自分はそんな事にはまったく気づいていない。
確かにハウリングがするので自分の声は聞き取れない状況だったけど、これはひどい。
しかも僕ときたら、その悲惨な状況で堂々と歌い切ってる。
ジャイアンか?
いつの間に俺はヤンサンのジャイアンになっていたのか?
などと反省はしたものの、なんだか笑えてきた。
いやいや。
そもそも俺はミュージシャンか?
調子にのった漫画家が自分の番組でふざけているだけじゃないか。
だったら「ジャイアン」でいいし、むしろジャイアンでなくてはいけない。
「下手な歌」で平然とステージを楽しんでいる、変な漫画家でいいのだ。
ずっと昔から「大事なのは技術じゃねえ!」と言ってきたのに、歌が下手だからと言って落ち込むなんて、俺はバカか。
なんて・・ジタバタしていたものの。
いざフェスのリハに行くと、ヤンサン馴染みの「音楽仲間」がワクワクした顔で集まってる。
緊張してたり、はしゃいでたり、新顔も顔馴染みもみんな「いい顔」している。
北海道や京都からも来てくれてる。
音楽のジャンルは相当違うけど、共通点は「ヤンサン好き」で「ご機嫌」ってこと。
もう最高だ。
僕は始まる前から全員を抱きしめたくなっていた。
そしてフェス本番では完璧にその場に「神」が舞い降りてきていた。
音の作り出す「圧倒的な多幸感」
終了後、僕は言葉を失い、ただただ感謝していた。
今回のステージのほとんどを僕は舞台の袖で見ていた。
緊張した出演者が僕の横を抜けてステージに飛び出していく。
あの人気者「カルロス袴田」も恐ろしく緊張していた。
ところがステージに飛び込んだ後の彼らはしっかり自分のパフォーマンスをやり切る。
それが「猛烈に」格好良かった。
「やるのか?」「やらないのか?」という選択の時、僕は怖くてもまず「やる」を選択してきた。多くは「失敗」の可能性があった。
ヤンサンの放送もそうだし、テレビやら講演やら「大物との対談」なんかもそうだ。
でもその「失敗」を恐れて「やらない」という道に行ってたら、その時はいいけど何も始まらないのだ。
考えてみると、ヤンサンで何かを応募してくれた人達はみんな、同じように失敗覚悟で飛び込んできてくれた「勇者たち」だ。
そんな人達を神は祝福してくれる。
いや、神が見つけてくれなくても、俺が祝福する!!
ヤンサンファミリーが祝福する!!!
来てくれたヤンサン仲間が客席にいっぱいいる。
最高の雰囲気だ。
「いいぞ、お前ら最高だ!!!」
気がつくと音程の事なんか吹き飛んでいた。
音程?って何の話だ?
ああ・・
とにかく、フェスは大成功だった。アリスにもなれた。みんなご機嫌になった。
みんなありがとう。この愛は1億倍にして返す。
公式サイト:漫画家 山田玲司 公式サイト
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番組観覧応募ページ:Coubic 山田玲司のヤングサンデー
平野建太
Written by
播磨 貴文
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