【第159号】憂鬱に効く「鳥作戦」
憂鬱に効く「鳥作戦」
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おことわり:このコラムは、ニコニコチャンネル「山田玲司のヤングサンデー」で配信されているメルマガを全文転載してお送りしています。転載期日が2018年4月下旬以降の号は、テキストのみを抜粋・転載しております。
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いくら「ご機嫌」に生きて生きたくても憂鬱な気分はやってくる。
ここの所。「ものすごく楽しい事」が沢山あって、それはもう最高の日々ではあるのだけど、そうもいかない「悪い知らせ」ってのも容赦なく届くもので・・。
その多くが「売れない」だの「努力が認められない」とかいう、「いつものやつ」なんで、それはそれで「対処法」はあるし、「心の筋肉」だけはマッチョなんでなんとかなるんだけど。
今回の「総選挙」には久しぶりにうんざりした。
あれだけ「国民は現政権に怒っている」という話があって、無党派層も今回ばかりはさすがに投票に行くかもしれない、とか聞いていたので少しは「でたらめ政府の終焉」に期待していたのだ。
今週の放送で僕は「ペルム紀に興味があるんだよ!選挙なんかどうでもいい」みたいな事を口走ってたけど、そんなわけない。
選挙は「命の問題」だ。
「私に献金してくれた会社は、作った食品に毒が入っていても売っていいから」
みたいな政治家が沢山当選したらどうなる?
困る。
おまけにネットでは、毎度おなじみ「不正選挙疑惑」の情報が流れてる。
「与党幹部の親族がやっている会社が今回も選挙システムを管理しているので、投票はコントロールされてしまう」・・・といかう、本当だったら絶望的な情報だ。
嘘であって欲しいけど、疑惑を晴らす情報は見たことがない。
そしていつもの、投票前の「与党圧勝」とかいう「選挙予想」報道。
「こんなんじゃ投票前に行っても無駄だな」と思わせるのに抜群の効果があるだろう。
投票率が下がると「組織票」が生きるので、これまた「現政権」には最高の報道だ。
これで国会は、会社や組織、団体が集めた票で当選する議員ばかりになるのだ。
そんな議員達は票を集めてくれた「仲間たち」のために働く。
「時代遅れの産業」も「体に悪い食べ物」も「仲間がやりたい」と言えばOKだとか聞く。
地震を起こす「活断層の上」に建てられた老朽化した原発に「核の火」が灯る。
震災で家を失った人たちや、貧乏で学校に行けない子供たちより「変な事業」に税金が使われる。
憂鬱にならない方がどうかしている。
本当はみんな「狂っているのはわかっている」のだ。
それでも「本当のことは言えない時代」が「今」なのだ。
もう何もかも嫌になるけど、僕の仕事は「こんな世の中で倒れていく人を救うこと」だ。
それが「サブカルのメインワーク」なのだ。
とかいいつつ、凹むものは凹む。
そんなわけで、こんな時の僕は「時空を超えた鳥」になる。
前にも書いたけど、視点を変える事が「身近な憂鬱」を抑えてくれるのだ。
少し前には「第一次大戦の塹壕戦」や「ノルマンディー上陸」のドキュメンタリーを何度も見ていた。
あれに比べれば「今の時代」なんか嘆くに値しない。
そして毎度の「特効薬」が、今回放送で取り上げた「地球に起きた大量絶滅の話」だ。
でもね。
まだ他にも「いい薬」がある。
その1つが「ヘンリーの話」だ。
僕はよく知らなかったんだけど、絶望に効くクスリにも出てれた、大好きなオリバー・ストーン監督が、歴史学者と作った「真実のアメリカ近代史」のシリーズで彼の話を知った。
ヘンリー・ウォレスは第二次世界対戦の頃のアメリカの政治家だ。
「もし彼が大統領になっていたら、日本に原爆が落とされる事はなく、米ソの冷戦もなく、世界中が核だらけ原発だらけにならなくて済んだのでは?」と、オリバーは言うのだ。
彼はルーズベルトの片腕《副大統領》で、対立するソ連とも「考え方は違えども、お互いを尊重し、協力して繁栄する道がある」と、言っていた人だ。
農業を重んじる人道派で、同時期に開発されていた「核爆弾」など使用する様な人間ではない。
「天皇の命を保証する事を条約に入れれば、日本は降伏して戦争は終わるので、核の使用は必要ない」と言っていた人達と同じ主張をしていた。
「ソ連と仲良くして、核なんか使わない」という人が、当時のアメリカの政治家にいたというだけで、厭世感が癒される。
当時のルーズベルト大統領は健康が悪化していた。
大戦は末期。日本は完全に戦闘力を失っていて、日本の敗戦は時間の問題だった。
連合国の問題は日独崩壊の後の世界のパワーバランスのことだった。
ヘンリーは再び副大統領に立候補するのだが、彼が大統領になると困る人たちが彼を引きずり下ろした。
それが起こった「民主党党大会」のイカサマは本当にひどい。
その時、ヘンリーを押しのけたのが、あの「トルーマン」なのだ。
大戦末期、ルーズベルトが亡くなる。そして自動的に副大統領が大統領になった。
それは「穏健派」のヘンリー・ウォレスではなく、原爆がどんな武器かもわかっていないのに使用に踏み切ったトルーマンだったのだ。
「気弱な女の子みたい」だった彼に「マッチョだった父親」は失望していたという。
そんな彼は「弱い自分を見せたくないために、強気に出てしまう小心者」だったという。
トルーマンがスターリンに「強さ」をアピールするために原爆は使われた、と歴史学者は言っている。
そこからアメリカは狂ったバイソンみたいに暴走していくのだけど、同時にケネディもキング牧師も現れる。
2人は殺されるものの、黒人の差別は減少に向かい、ベトナム戦争も終わりに向かう。
どうしようもないのが人間ではあるけど、ヘンリーみたいな人もいる。
状況次第で「いい方にも向かう」のが「歴史の流れ」でもある。
憂鬱な時は鳥になる。
「鳥観」する。
「いいこと」も「悪いこと」もある。
どちらもそんなに長くは続かない。
「悪いこと」が長引いている時は「いいこと」が近いってことなのだ。
山田玲司
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平野建太
Written by
ナオキ
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