コラム 2018.08.31

【第177号】お金がもらえる国になったら?

山田玲司のヤングサンデー 第177号 2018/3/12

お金がもらえる国になったら?

 

 

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おことわり:このコラムは、ニコニコチャンネル「山田玲司のヤングサンデー」で配信されているメルマガを全文転載してお送りしています。転載期日が2018年4月下旬以降の号は、テキストのみを抜粋・転載しております。

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最近「ベーシックインカム」ってのが話題になってる。

 

聞いたことある人も多いと思うけど、早い話が「国がみんなにお金をくれるシステム」ってことらしい。

 

wikiには「最低限所得保障の一種で、政府がすべての国民に対して最低限の生活を送るのに必要とされている額の現金を定期的に支給するという政策。」

なんて書いてある。

 

「こんな事したらみんな働かなくなってしまうじゃないか!」

なんて声も聞こえてくるだろうし、それまで「好きでもない仕事」を必死にしてきた人の中には納得できない人もいるだろう。

 

「人手不足は深刻になるし、国際競争力も減退してしまう」なんて意見もあるだろう。

 

ところがこの政策は歴史も古く(18世紀末から)近年ヨーロッパで試験的に導入する地域が増えてきている。

すでにフィンランドは国としての導入に踏み切ったらしい。

 

経済のドキュメンタリーを観てたら、アメリカでは70年代の初頭にこのベーシックインカムが導入される事になっていたと言っていた。

 

当時の大統領はあのニクソンだ!

当時のアメリカのある地区でこの政策のためにベーシックインカムを試験導入した結果、犯罪率は減り、子供の学力は上昇し、経済は好転し、しかも仕事を辞める人は増えなかった!!!!と言うのだ。

 

この結果に、右派も左派も納得し、ベーシックインカムは導入の運びとなった。

 

ところが、その直前に保守派の1部が反対を唱え、その政策は廃案になった。

理由は試験導入の結果「離婚率が上昇した」というデータがあったため、ベーシックインカムは女性の社会進出を促進し、女たちが家を出てしまうのでは・・みたいな事を心配した保守派がいたらしいのだ。

 

ところが、そのデータは偽物で、本当は離婚も増えてはいなかった

 

そんなわけで、アメリカではベーシックインカムは採用されず、「負けたら終わり」の世界で暮らしに追い詰められた人達の起こす犯罪は減ることはなく、あとはご存知の通り。

 

この話は日本にも重なると思う。

挑戦して負けても、働けなくても、学校に行かなくても「飢え死にする事」はない、という社会なら治安も良くなるだろうし、様々な挑戦が可能になるので経済のイノベーションも活発になるだろう。

 

財源含め色々な問題はあるだろう。

でも文明国ならば「ダメでも死なない」っていう仕組みはあっていいはずだ。

 

【ベーシックインカムで誰が「困る」か?】

 

ベーシックインカムで興味深いのは「働かざるもの食うべからず」という、旧来の価値観を根本的に揺さぶることだろう。

 

それまでの日本は「働く人」か「学ぶ人」か「育児する人」でなければダメ人間、という価値観が支配していて、今もその「宗派」の人は多い。

 

そういった価値観の人は「ちゃんとした人」になれないと、”罰として”ホームレスみたいな悲惨な暮らしになってしまう、という「恐ろしい呪い」を子供に浴びせたりする。

 

子供達に「負けたら社会は助けてくれない」と言うのだ。(今の制度では1部は事実だけど)

 

なので多くの子供が「ちゃんとしないと危ない」と思って受験に励み、結婚を急ぐ。

ところが「それ」を達成しても「幸せを感じるか」は別の問題で、仕事は責任を増し、苦しみは続く。

それなのに何をしても税金は取られるのだから恐ろしい。

 

一方で「ちゃんとしないけど大丈夫」という人達も現れた。

 

親の世代の資金に依存できる世代で、不安はあるけどなんとか生きている。

もし親が「ヒッピー時代」を知っている団塊世代となれば最強だ。

 

そんな状況を風刺したアニメが「おそ松さん」だと思う。

もし日本でベーシックインカムが導入されたら、国中に「おそ松さん」が溢れるかもしれない。

そんな「ニートたちのお金」を目当てにしたビジネスも現れると思う。

面白いけど気に入らない人も多いだろう。

特に「ニート」を個人の責任にして「ダメな人間」あつかいしていた人は気に入らないだろう。

 

とはいえ「仕事ができない」とか「学校に行けない」ってのは、全てが「本人のせい」ではない。

 

色々な人を見てきて思うのは、努力家で真面目な人ほど、心が折れた時に動けなくなるという事だ。

 

このベーシックインカムの議論は「幸福論」に繋がる深い議論に繋がるよなあ・・なんて、

 

そんな事を考えていた時に、今回の「しんさいニート」の著者のカトウコーキ君から手紙を貰った。

 

【しんだらニート】

カトー君は東北大震災を福島で体験した人で、

それをきっかけに、自分の問題に気づき「心を支配していた父親」との問題と向き合ってきた人だ。

 

その戦いの全てを描いた漫画「しんさいニート」が素晴らしかった。

 

福島の人に対する「政府の冷たさ」にずっと不満があった僕は、この機会に彼に来てもらって「震災の当事者」からの言葉を語ってもらおうと思ったのだ。

 

国策の過ちが原因の災害で苦しむ人を見捨てるような国では「ベーシックインカム」など程遠い。

 

そんなこんなで放送はいい感じに進んで伝わってくれた人も多くて嬉しかったのですが、

今回特に面白かったのはカトー君との「打ち合わせ」だった。

 

その時の話です。

去年から僕は「死んだら温泉に行く」というイメージが気に入って、それを絵本にしたり歌にしたりしていました。

 

絵本は完成して、今出版社との調整に入っていて、自分で「しんだらおんせん」と言う曲を作って番組で歌ったりしてました。

 

すると、ヤンサン音楽チームの富樫君が「しんだらハワイ」という曲をアップしてくれて、これがいい感じなのだ。

 

引き続きお馴染み「ギャラクシーデット」が「しんだらおきなわ」を作ってきた。

これがまた実にいい。

 

なので今年は「しんだらフェスやるか」なんて言ってたら、「しんさいニート」のカトー君も曲を作る人だ。

「カトー君も出ようよ。なんか曲作ってさ」という流れになった。

 

どんな曲がいいかな、とか話してたら「しんだらニートでええやん」と誰かが言った。

 

「しんだらニート」

 

これもいい。

 

死んだらもう働かなくもいいし、学校にもいかなくてもいいって感じでいい。

まるで「おばけにゃ学校も試験もなんにもない」という「水木しげるの世界」だ。

 

「死んだら鬼太郎の仲間」ってことか。

 

おばけにとってのベーシックインカム(最低保証)は「死なないこと」だ。

だからと言って、そんな鬼太郎達が自分の事だけを考えて何もしないかと言えばそうでもない。

鬼太郎達は報酬もないのに誰かのために戦ったりもする。必要ならば働くのだ。

 

水木先生は「そんなヤツはおかしい」と言っていたけど、本当は「人間にはそういう部分がある事」を知っていて言ってるのだ。

 

「死んだらニート(おばけ)」の中で『死んだ』のは「過剰な欲望」や「飢えへの恐怖」かもしれない。

 

「欲」が死んだら(楽しいな♪嬉しいな♪の)「おばけの世界」になるって考えるとかなりいい。

 

人はあまりにも「欲望」に取り憑かれてきた。

確かに文明が未発達で生産性が低い時代にはそれも仕方ないと思う。

「食うため」に他国の人を殺して土地を奪ったり、逆に攻撃されることに怯えて生きていた。

 

それも文明が進んで生産性が上がれば「奪い合う」事は減らしていける。

 

文明が進んでも「資本主義」のもと「奪い合いのゲーム」を続けていては「安らぎ」なんて得られない。

 

「成金の野望」ってのは、かつて体験した「飢え」のトラウマが生むんじゃないかと僕は思う。

 

「持つ者達」は「持たざる者達」に恨まれ、狙われる事もある。

なので「持たざる者」が「死ぬことはない」という仕組み(ベーシックインカム)に守られれば、その不安も少しは消えるだろう。

 

〜「死ねよ欲望」さすれば「幸せ」が現れる〜

 

これって大昔から仏教が言ってたヤツだ。

 

ベーシックインカムは「お花畑の発想」なのか?

 

いやいや、ブッダキリストお墨付きの「幸せになれる知恵」の1つなのかもしれない。

 

山田玲司

 

 

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