コラム 2018.10.13

【第183号】〜「平均」を出すと全員が不幸になる〜

山田玲司のヤングサンデー 第183号 2018/4/23

〜「平均」を出すと全員が不幸になる〜

 

 

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おことわり:このコラムは、ニコニコチャンネル「山田玲司のヤングサンデー」で配信されているメルマガを全文転載してお送りしています。転載期日が2018年4月下旬以降の号は、テキストのみを抜粋・転載しております。

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《思い出し怒り》

 

きっかけは、おっくんの「きたがわさんもレイジさんも若いじゃないですか〜」

という他愛ない一言だった。

 

気の毒なおっくん。

彼は何も悪くないのに、僕の中で「思い出し怒り」が蘇ってしまった。

 

「うるせえ、どうでもいいんだ。そんな事は!」

「日本人は『年齢』と『体重』の話ばっかしすぎなんだよ!」

 

確か僕はそんな事を言ったと思う。

 

実はこの時僕が「爆発」したのは、今回のテーマである「フジテレビの件」が原因だった。

 

それは番組で話していた「とんねるず登場」の80年代半ばの話。

そして「それ」が象徴とするこの国の「排他的流れ」は、僕にとって大きな「何か」なのだ。

以前にも書いたり話したりしているけれど、どうしても「あの頃の怒り」が蘇ってしまうのだ。

 

《とんねるずの時代》

 

彼らは「体育会系のやり方」で、「ノリの悪いヤツ」を「排除」、もしくは「ネタ化」していた。

 

その中にいたのが、見た目でラベリングされた「ガリ勉」や「オタク」や「ゲイ」などだった。

彼らは無邪気に彼らをラベリング(キャラ化)して、笑いの対象(ネタ)にした。

 

そういう空気は物凄い勢いで当時の若者に浸透し、「あのノリ」に乘れないやつは「遊び場」から排除される、という空気になっていった。

そして、その「遊び場」には、いわゆる「イケメン男子」と「可愛い女の子」が含まれていたので、多くの若者は「そこ」から排除されないように必死になった。

 

かなり前にこのメルマガで書いたかもしれないけど、僕の大学時代の友人は、ずっと「アニメファン」だったけど、当時の空気ではそれを言うと「キモオタ」にされてしまうため、ずっとそれを隠していた。

 

その当時の僕は「仮面の人格」を演じてなんとかやり過ごしていたけれど、「子供みたいなバカ騒ぎができる」という「ノリ」ができないと排除される人達のことを思うと複雑だった。

 

なにより嫌だったのは、排除される人の中には「まともに人生について考えている人」も含まれていたことだ。

 

社会や人生に疑問を抱き、歴史上の人物や海外の人にも「その答え」を求める「求道者」もいたと思うし、何より僕が「そういう人間」だった。

 

「フジテレビの時代」以降に起きた「インテリ排除」の流れは「考える若者」の排除でもあったと思う。

 

その背景には「学生運動の敗北」と、団塊世代の「不毛なインテリごっこ」の後遺症があったにしろ、若者に「考えない」ことを押し付けていた「空気」は、後の時代に「深刻な問題」を残していったと思う。

 

正確に言えば、とんねるずはたまたま時代のアイコンになっただけで、犯人は彼らを選んだ「時代の空気」だったと思う。

 

要するに「みんなが観る番組」が、「そういうもの」になったので、視聴率の取れない「その他のもの」は切り捨てたという、今の「ポピュリズム」そのものだろう。

 

《お勉強後遺症》

 

フジも含めて「知的なテーマ」を模索した番組の挑戦も何度か見かけた。

しかし、それが続かないのは「みんな」が観ないからなのだ。

 

そして、最終的に支持されたのは、学校のテスト問題みたいな「漢字テスト」や「計算」を「間違いなく答えるゲーム」みたいなショーと、高学歴のタレントと学歴の低いタレントが「難しいテスト問題」を正確に答える、みたいな番組だった。

 

ここに「自分の哲学」より「事務能力」を試されるという、日本教育の悲惨な末路が露見している。

(多くの)日本人が声高に主張出来ることは、「自分の考え」ではなく、一般に認知された「誤字脱字」や「計算違い」の指摘なのだ。

 

「私はこう思います」ではなく。

「それは教科書に載っていたのと違います」という声ばかりになった。

これは明らかに「受験後遺症」「お勉強後遺症」だろう。

「暴れるバカ」が「真面目なバカ」に変わったのが0年代だったのだと思う。

 

そしてここにも「マーケティング」の悲劇があって、「平均的に好まれるもの」がメインステージを奪うと、その他の多くも「似たようなもの」になっていく。

 

《ラベリングをやっつける漫画》

 

僕があの当時悲しかったのは、知的水準を下げる事で支持された「メインステージ」は、悪い意味で子供っぽい「排他的な場」になったことだった。

 

「その場」では、「オタクは気持ち悪い存在」と決められていて、「オタク」とラベリングされた人間の1人1人が「何について熱中しているか」は関係ないし、1人で本ばかり読んでいる「メガネくん」が「何を思い」「何を考えている」のかも関係ないのだ。

 

今回「漫画動画」のコーナーで取り上げた、僕の漫画「Bバージン」は、そんな(オタクという)ラベリングをされた男が、「仮の姿」で、とんねるず的な世界に挑んでいくところから始まる。

 

それは「オタク」や「ゲイ」や「変な見た目」をバカにしながら、ろくにモノを考えていない「ノリだけのやつら」にケンカを売ったのが「Bバージン」だったのだ。

 

《「全員を不幸にする」日本人の価値観》

人生相談や恋愛相談のほとんどは「自分の評価」についての悩みだ。

「私は人からどう見られているのか?」が、悩みの根幹にある。

 

特に若い女の人は「年令を重ねる事」と「太る事」に怯えている。

男も似たようなもので、「ハゲて」「太って」「年をとった」ら「自分は終わり」みたいに思っている。

 

逆に言えば、日本人にとって「最高の価値」は「若くて細い美人」と「若くて細いイケメン」という事になる。

 

あまりに幼稚な価値観でクラクラするが、これも事実だろう。

 

確かに「若くて細くて魅力のある人」もいる。それはそれで「価値」の1つだろう。

でも僕が魅力を感じる人の多くは「ハゲ」だったり「じいさん」だったりするし、実際、男にモテる女は「若い」とか「細い」で決まってはいない。

 

そもそもこの価値観はいったい誰を幸せにするのだろう。

全員が必ず年を取るのに、人生のピークが10代後半からのわずか数年で、その後は長い下り坂を必死で誤魔化す価値観でいいのか?

 

「必死で若作りしている妙齢のタレント」や「美魔女おばさん」なら大丈夫なのか?

いやいや、とても彼らになりたいとは思えない。

 

若いアイドルを応援している人や、それを仕掛けている人なんかはいいかもしれない。トロフィーワイフを探している成金オヤジもいる。

 

でも「その人当人」の価値についてはどうなんだ?

 

《かっこいいって何だ?》

 

この話はすべて「人に良く思われたい」という煩悩から来ている。

でもその煩悩は簡単に消えるものじゃない。

 

なので、人は「みんなが素敵」と言っている姿に自分を合わせようとする。

その「みんな」の価値観が「若くて細い」なのだから、みんな必死で「そこ」を目指す。

 

でもその「みんな」ってのは、本当に全員なのか?

本当に全員が「それだけ」を素敵だと思っているのだろうか?

 

人は必ず年をとる。

 

体型は変わるし、代謝が落ちると肉もつく。

全部「当たり前のこと」だ。

 

その「当たり前」を否定する価値観は「ほぼ全員」を不幸にするだろう。

 

例えば「ハゲ」に関しても。

「ハゲたらキモい」と言う国と「ハゲはセクシー」と言える国のどちらが豊かだろう。

 

実際の話、男も女も「若いほど好き」とか「細いほど好き」とか言ってる人ばかりではない。

「ハゲ」が好きな人も「デブ」が好きな人も本当は沢山いるのだ。

 

「好き嫌い」の根拠は、実のところ「自分」ではなく、その時の「空気」であることが多い。

「男もエステに行くべき」みたいに言われていた時代の女の人は「すね毛は気持ち悪い」とか言っていたが、今の時代「すね毛」を憎悪する女の人は見なくなった。

 

人の好き嫌いなんてものは、常に「確実なもの」ではないのだ。

 

フジが排除した「マイノリティー」の中に「多様な才能」が存在したのと同様に、「平均」という価値観が排除した「人の好み」には「多様性」が確実にある。

 

「平均」という「意味のない幻」に引きずられるのは、終わりにしたほうがいい。

 

まあ、つまり「年齢」も「体重」も、人の価値とは関係ないって話です(笑)

 

今週も色々あるだろうけど、頑張ってね!

 

山田玲司

 

 

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