【第184号】「バカな親」は怒っている
「バカな親」は怒っている
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おことわり:このコラムは、ニコニコチャンネル「山田玲司のヤングサンデー」で配信されているメルマガを全文転載してお送りしています。転載期日が2018年4月下旬以降の号は、テキストのみを抜粋・転載しております。
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両親が大喧嘩している。
大声で互いをけなし合っている。
主人公の少年は、2人のケンカを聞きたくなくて、テーブルの下に逃げ込み、両耳を塞いだまま「あーあー」と声を出して聞こえないようにする。
これは、ラッセ・ハルストレム監督の「マイライフ アズ ア ドッグ」という映画のシーンだ。
僕はこのシーンが忘れられない。
ここで少年は「こんな時は宇宙に送られた、ライカ犬の事を考える。帰って来られないのに宇宙に送られた犬だ。あの犬に比べたら僕は幸せだ」みたいな事を思う。
嫌というほど有名なセリフだけど、何年経ってもこのシーンを思い出す。
当たり前だけど、親のケンカは、子供に大きなダメージを与える。
その「本質的な理由」の1つに、自分の親が「人生に失敗している」事を目の当たりにさせられるからだと思う。
自分の意志で相手を選んで、幸せになるはずの2人が、感情むき出しで罵り合いをしている。
子供から見たら、この2人は「幸せになる事に失敗している」と思うだろう。
この事は「国や社会」にも言えると思う。
最近のテレビやネットを見ていると、みんなが怒っている。
油断していると、僕もついその「ドロドロとした何か」に引きずられて、暗澹とした気分になってしまう。
そんなニュースの中にも、いいニュースはある。
番組で言っていた「プラスチックを食べる虫」の話もそうだし、ヨーロッパではついに、あのミツバチ殺しの「殺虫剤」が禁止になったという。
墜落していく世界にも希望はあるのだ。
それでも、そんな話はまず聞かれない。
何を見ても、いつもの「怒った人」が何か言ってる。
人生に失敗した「バカな親」の姿を見ている様で気分が滅入る。
なので最近は「自分がまだ純粋だった少年時代に聴いていた曲」を色々と聴いていた。
何十年ぶりに、松山千春の初期作品の「こんな夜は」を聴いた。
今更ながら、その曲の世界には、驚くほど「ノイズ」がない。
サウンドもそうだけど、何しろ描かれているその「世界」にノイズがないのだ。
「みんな寒いだろうね、こんな夜は」と言っているだけなのだ。
まるで隣にいる人が「みんな寒いだろうね」とか言ってるみたいだ。
そこには「シンプルな優しさ」があって、自分より「誰か」の事を思っている人がそこにいる。
「ただの優しい人」が、そこにいるのだ。
僕は思い出す。1981年。
まだネットのなかった時代。部屋にはラジカセしかなかった時代。
深夜のラジオでは、大人が「僕だけ」のために語ってくれて、彼らはいつもご機嫌だった。
そんな事を思い出していたら、何だか「森」に行きたくなって、車で千葉にある自然公園に向かった。
煮詰まった時の定番コースだけど、そこに行けば、ほぼ確実に「森」があるのだ。
ところが、連休の公園は人でごった返しているみたいで、近隣の道はすでに車で溢れている。
ご機嫌な人たちもいるけど、こういう日の公園には「怒っている親」も多い。
なんだかもう、公園に行くのも嫌になって、曲がるべき道を曲がらずに「知らない道」を走った。
もう「怒っている人」に会いたくないのだ。
すると、すぐに「知らない喫茶店」を見つけた。
しかもそれは「森」の中にある。
ふらっと入ると、その店は僕の好きな「木漏れ日」が見える「庭のある喫茶店」だった。
ちょっと嬉しくなって、デザートでも頼もうかな、なんて思ってメニューを見たら、「おはぎ」があった。
おはぎは僕のソウルフードだ。
頼んでみると、そのおはぎは、ここ数年で1番美味しい「おはぎ」だった。
店には「怒っている人」は1人もいない。
庭の木には、鳥の巣箱があって、シジュウカラが忙しそうに雛の世話をしていた。
そう。
みんなが「怒っている」わけじゃない。「怒ってばかり」なわけでもない。
「知らない道」の先には「おはぎ」も待っている。
山田玲司
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企画編集:山田玲司
平野建太
発 行:合同会社Tetragon
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Written by
ナオキ
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