コラム 2017.07.22

【第66号】「穴」にハマった時の対処法

山田玲司のヤングサンデー 第66号 2016/1/11
「穴」にハマった時の対処法

 

 
元日の放送では、皆様ありがとうございました。
こんな時に観てくれる人が本当にいるのか?なんて思っていたんだけど、予想以上の数の人に参加してもらえて嬉しい限りでした。
放送では、いつかやりたいと思っていた「志磨遼平とロックってものを徹底的に語り合う」という企画がついに実現して、また1つ夢が叶った所からの年明けでした。
徹底的に初歩から行こう、と思って「ビートルズとストーンズの違いは?」なんて、昔では絶対に許されないような基本中の基本なんかをぶち込んで、ノンストップでの4時間半。
最後は「異文化の衝突と融合が生み出す」みたいな話まで行って、もう最高の夜でした。
予想通り放送の後も話は止まらず、結局みんな朝方まで、踊りながらロックの話をしていました。
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「先輩、最高ッス!」と思っている3人
僕が放送で何度も「クロニクル」の話をするのは、自分が好きな音楽や漫画などには、そこに至るまでの歴史があって、それはもう「宝の道」で、その1つ1つが、当時の先輩達の生々しい葛藤と、愛と、試行錯誤の歴史から生まれた「宝石だらけ」の道だからです。
そんな「過去の人達」を大事に思っている所が、僕と志磨遼平とおっくんの大きな共通点です。
僕らは、三島由紀夫だの細野晴臣だの、生死は問わず「先人の話」をしながら「先輩、最高ッス!」と言いながら生きている人種なのです。
志磨遼平の曲を聴いてもらうと、その中には過去の先輩の「宝」が散りばめられているのがわかると思います。
本人は「パクったんです」なんて言っていますが、そんな簡単なものではなく、自分も愛する先輩ミュージシャンに「届きたい」あるいは「同化したい」という、強烈な思いがその背後にあるわけです。
僕の漫画にも、手塚治虫先生や石ノ森章太郎先生が、何度も登場しています。
「アリエネ」ではセザンヌやクールベも出ていますし、「NG」ではズバリ「ジョンレノンそのもの」が登場しています。「水の鳥」という僕の漫画は、もちろん「火の鳥」へのオマージュです。
一部の人に言わせれば、それは「ものすごくダサい行為」ですけど、そんなのいいんです。
好きなんです。尊敬してるんです。感謝してるんです。
そもそも「完全に新しいもの」なんて、できるわけないんです。
あの「ビートルズ」ですら、過去の人達の「お宝」の集積の上に存在しているわけで、名盤「サージェント・ペパーズ・ロンリーハーツクラブバンド」のジャケットは、彼らが影響された人達がコラージュされています。
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「煮詰まる時」はどういう時か?
長く漫画家をやっていると、自分が「どういう状態の時に身動きが出来なくなるか?」というのが解ってきます。
基本は「嫉妬」です。
何か「すごいもの」を世に出して、大きな評価を受けている人を見ると、悔しくて、自分は何をやっているんだ、なんて焦るわけです。
その思いは、自分にしか出来ない「すごいもの」を生み出さなくては、なんて気持ちになって、そのハードルを上げていきます。
そして、浮かんだアイデアを「そんなもの昔あった」とか「そんなの誰かがもうやってる」とか、評価される事を再優先にしてしまって、何も出来なくなってしまうのです。
そして自分に自信がなくなって、人に会うのが憂鬱になってきます。
「ダメな自分」を見せたくないのです。
そうなると、友人からの新しい情報はもう入って来なくなり、情報はメディアからのものばかりになり、増々、硬直化していくのです。
もちろん、メデイアでは常に「誰かのすごい作品」が絶賛されています。
こうして、「世の中全てが敵だ」という気分になるのです。
こういう気分で生み出される物語は、基本「俺を分かってくれ」「私は可愛そう」という、「自分押し付け型」のうざい作品になるので、増々「普通の人」には理解されなくなってしまうのです。
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穴の抜け出し方
何度もそんな「穴」にハマってくると、今度は「穴」に入ってしまった時の脱出方法もわかってきます。
脱出の方法は、まず「人の目を無視する」所から始めます。
「あいつらに何て言われるかわからない」なんて自意識は、この場合「毒」にしかなりませんので、トイレに流しましょう。
「出来たものは人には見せない」と決めてしまうと、「本当はこういうのが作りたかった」というのが見えてきます。
1番かっこつけたのと、1番下らないもの、1番エロいもの、なんかも作るといいでしょう。
初期衝動を思い出すようにするわけです。
そしてこれが肝心なんだけど、「自分があこがれた人のやり方をマネて」作品を作るのです。
真似るんです。パクるんです。いいんです。人には見せないんだから、問題はないんです。
そして、そんな「パクリ野郎気分」になって、友人に会ったりしましょう。
そこで、話をして「いいな」と思ったら、その友人からもガンガン盗みましょう。
「何でもパクっていい」というモードで、しばらくやってみると、だんだん「これは自分だな」という部分が見つかってきます。
そんなこんなで、自分の作品が生まれてきたら、人に見せてもいいし、その作品を売り込んで、お金をもらってもいいのです。
そもそも「何をパクるか?」という時点で、「自分」がいるのです。
近年のヒップホップカルチャーや、ミクスチャーなんかではこの「選択」に「オリジナリティ」を見出していく文化として進化しています。
これは公共の仕事を談合で頂いて、ネット拾った作品を適当にアレンジして、お金を頂く、という下劣な行為とは違う話です。
愛する過去の人とのコラボレーションをする事で、その人の「魂」を自分に染み込ませるような行為です。
それは、素直に「すごい人がいる」「僕もそうなりたい」と感じる所から始まるのです。
「俺は特別の存在だから、誰にも似てない」とか「自分以外は全部クソだ」みたいな気分は、僕も何度もハマった「お馴染みのコース」ですけど、それはもう「地獄の道」なのです。
絵の具を増やそう
「ロックをやるんだから、ロックしか聴かない」というのは、これまた「大変な道」です。
番組で言っていた話で、ポール・マッカートニーが、実はクラッシックやジャズに詳しかった、というのがありましたけど、沢山の文化を知っていることは、可能性の幅を大きく広げてくれるのです。
「ロックしか知らない」とか「地元しか知らない」というのも、それはそれでいい部分もあるんだけど、「1色で描ける絵」には限界があるんです。
自分が4色の絵の具しか持っていなければ、他の色を誰かに貰えばいいんです。
「映画」「音楽」「旅経験」「歴史」「文学」「科学」「哲学」「挫折経験」「恋愛経験」「スポーツ経験」などなど・・
これらすべてが自分の絵を描くための「絵の具」になるのです。
1色増えるだけで、描かれる絵の可能性は大きく広がります。
音楽で言えば、「ジェームス・ブラウン」も「バッハ」も「矢沢」もそれぞれが絵の具です。
志磨遼平の音楽があれほど多彩なのは、それだけ多くの「音楽」を聴いてきているから「絵の具の数が豊富」で「その使い方」にも詳しいからです。
面白いのは「人に会う」という行為もまた、絵の具を増やす行為です。
「誰かと何かを始める」なんて行為は「自分だけでは描けない絵画」を誕生させるのです。
志磨遼平が色々な人たちとコラボをしているのも、そういう(贅沢な)試みです。
今年は僕も、番組以外でも沢山の「コラボ」をしようと思っています。
「自分だけで生きていく時代」もいいんだけど、「コラボやってみるという時代」もいいものです。
あの元日の夜に、僕が1人でロックの話をしても、あれほどの夜にはならなかったはずで、あの夜、僕達は4人のバンドだったわけです。
あ、何か漫画家とかミュージシャンの為の話みたいだったけど、これはあらゆる人の人生にも言える話です。
多彩な話ができる人は魅力的だし、やれることの幅が広いので、可能性に満ちているのです。
何より「知らないこと」(知らない色)を知るのは、ワクワクして楽しいものです。
そんなわけで、今年も皆様に「素敵な絵の具」を沢山プレゼントしようと思っていますので、よろしくね!

山田玲司

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企画編集:山田玲司
矢村秋歩
発  行:株式会社タチワニ
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