コラム 2017.08.26

【第100号】観ているだけで「感染」してしまうものとは?

山田玲司のヤングサンデー 第100号 2016/9/5
観ているだけで「感染」してしまうものとは?

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とうとうこのメルマガも100回目だそうです。
思えばこのニコ生を始めたのは、スピリッツの「アリエネ」が終わった後、中々新連載に辿りつけない時期でした。
その後「モテない女は罪である」とか「スーパースーパーブルーハーツ」とか各種の新書とかをやりつつ、ようやくまたスピリッツでの連載となったわけです。
そんなもの「めでたい」に決まってます。
でも、今回の「新連載が始まるまでを担当編集者と語る」という企画はちょっと心配でした。
実は「これはちょっと見せたらいけないものを見せてしまっているんではなかろうか・・」なんて思っていたのです。
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もちろん放送は物凄く楽しかったし、何より普段僕が一緒に漫画を作っている「チームメイト」である担当の2人をみんなに紹介したかったので、そこは大満足でした。
でも問題はそこではありません。
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僕は常々「やりたいことはやっちゃいなよ」と、みんなに言っているのだけれど、その苦労や具体的な「壁」についてはあまり語ってはいないのです。
そんなものは始めたら嫌というほどわかるので、始める前から「この世界は地獄のように厳しいのだ!」なんて言わなくてもいいと思っているからです。
でも予想通り今回の放送は、その「漫画家が連載をする」という時にぶつかる「具体的な壁」や「果てしない苦労」の話が「これでもか」とばかりに公開されることになってしまいました。
コメントでは「俺にはムリ」みたいに引いてしまっている人たちの気配も感じてました。
そりゃあそうですよね。何しろ連載開始まで2年以上かかっている上に、企画がボツになる回数もハンパないし、しかも僕は新人じゃない。漫画の描き方なんて事まで放送している。その本人が連載まで2年もかかるんじゃ、夢も何もないよね。あはは。
とは言え、実際にたいした苦労もなくデビューして売れっ子になる人がいるのも事実です。
僕の漫画も、信じられないくらいにトントン拍子に成功した連載もあったし、今回みたいに難航する事も何度もありました。努力するのは当然として、その先はもう「時の運」でしかないのです。
そんなわけで、このメルマガで1番多く語ってきたのは、そういう「運」が良くない時の過ごし方でした。
最終的に何がモノを言うか?
今回の放送で、「プロでやっていくためには何が大事か?」みたいな話の流れになって、みんなが「具体的な対策」について言ってくれてる時に、僕はなんか勢いあまって「情熱じゃないかな」なんて、論旨から外れた「古臭い精神論」を口ばしってしまいました。
こういう疲れてる時には、つい「本当の自分」が出てしまうものです。
怖いですね、生放送。
でもこの「情熱」ってのは本当に大事なんです。
「なぜ僕が漫画家になろうと決めたのか?」
一言で言うと、漫画家(描き手)の「情熱」が感染したからなんです。
これは漫画だけじゃなくて、音楽も文学も映画も、みんなそうでしょう。そこには「作り手の情熱」があって、「生きてるって最高!!」と思い出させてくれたりします。
コンテンツの本当の価値は、描き手の「情熱」が受け手の人生を変えてしまうことなのです。
そんな「情熱の込められたコンテンツ」が、前の放送で志磨遼平が「文化っていいっすよね〜」言っていた「文化」なのです。
それが「ロック」だった人は、人生をロックに捧げてしまったり、「漫画」だった人は人生を漫画に捧げてしまったりするわけです。
これは「熱い系のコンテンツ」だけではなく、脱力系や静かな物語などにも込められていて、「なんか面白かった」と感じた時に作者の「静かな情熱」が、見えない天使のように読者の心を撫でてくれていたりするのです。
それで少しだけ元気になれたら、それは「文化」の恩恵なのです。
その「情熱」は「魂」とか「愛」とも言えるでしょう。
「優しくされたから、優しくしたくなった」みたいな心が人にはあります。
それと同様に「感動させてもらったから、感動させたい」と思う気持ちが人にはあるのです。
僕を打ちのめした「漫画家の情熱」は、その時まだ小学生だった僕に「自分にもやれる!」と思わせてくれました。
それは当時40代だった「手塚治虫」や「水島新司」の情熱の炎が僕に引火したわけです。
僕の心のトーチの火は未だに消えません。
僕はこの番組や本などの「文化」で、その「火」を観ている人達の心に引火させたいのです。
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ところで。
僕は疲れすぎると、大自然の中で1人になりに行きます。森に入って、海に浮かぶのです。
でも、すぐに「次は何をしてみんなを楽しませようか」なんて考えている。
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結局のところ「誰かを幸せにする」ってこと以上に面白いことなんかないんだよね。
 山田玲司

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企画編集:山田玲司
矢村秋歩
発  行:株式会社タチワニ
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