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コラム 2017.07.06

【第50号】映画の感想が「面白かった」しか言えない人のために

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山田玲司のヤングサンデー 第50号 2015/9/14
映画の感想が「面白かった」しか言えない人のために

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先週は初の中2ナイトニッポンという事で、まったりラジオ系放送をやろうか、なんてノリでやってみたんですけど、なんだか大騒ぎになってしまってお騒がせしました。
「長渕を愛しすぎる男」との長渕論は、僕としては面白かったんですけど、みなさんを置き去りにしてなかったか心配でしたね。
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ただ普通に長渕の凄さ、なんかを語るのもいいんだけど、それでは物足りなかったので「長渕VS矢沢」という軸を持ってきて放送をしてみたわけです。
「世界には2種類の人間がいる、長渕人間と矢沢人間だ!」
なんて、ふざけた命題を立てたとたんに話はグッと面白くなるんですよね。
このテーマは水曜会でおっくんや志磨遼平達と一緒にバカ話をしている時に出てきたヤツで、クリエイティブな人間が集まった時はこういう冴えた企画が湧いてくるわけです。
そして、そういう遊びの中から生まれるものの中に「パワフルなコンテンツの種」があるんです。
そんなこんなで、放送は盛り上がったのですが、放送の後にこんなメールをいただきました。
Q:

◯とーけん

山田先生、おっくん、何時も楽しく放送を拝見させていただいております。

いきなりですが相談というか質問です。
私は今年40歳になりましたが、作品を見る上で何でもそうですが、山田先生のような見方ができません。
僕にとってラピュタは少年少女の冒険物語でしたし、トイストーリーはちょっと不思議な、「オモチャが動いたら面白いぞ」っていう映画としてしか見られませんでした。
ライダーは「ああ言うヒーローだし、時代と子供のニーズを反映して上手いこと商業として成り立ってるなー」くらいの認識でした。
「海賊はアニメーターで、軍隊は就職したスーツ野郎でオモチャは親の目線だ」なんて普通読み取れますか!?
ましてやライダーは石森先生の化身とかもう笑うしかありません。
しかし、そう言った解説を聞いた後だと、もう、そういうふうにしか見られません。
そういう解釈を出来なかった自分が悔しいのですが、教えて下さった山田先生に感謝してる自分がいるのです。
ある程度の予備知識が無いと映画の中のメタファーが読み取れないとは思いますが、山田先生のような解析が自分でも出来たらより映画や作品をを楽しめるんじゃないかと思い、見方のアドバイスを頂きたいのです。
「見る映画の数を増やして鍛えるしか無い」ってのは時間的に厳しいので、出来ればそれ以外でお願いします。
無茶を承知でよろしくお願いします。
A:
実はこのメールを頂いてから、深く考え込んでしまいました。
確かに僕は、ラピュタを観て、ただ単純に「ああ面白かった」とは思いません。
それなりの人がそれなりの努力をして作ったものには、何らかの「深み」や「重層性」「関連性」「メタファー」なんかが読み取れるもので、そこがコンテンツの面白さなわけです。
これはすべてについてそうで、学校なんかで先生が不機嫌だったりした時に「ムカつくよな」で終わるか、「先生に何があったのだろうか?」と考えるのでは「人生の面白さ」が違ってくるのです。
「空はなんで青いの?」と、子供に問われて、答えられない大人の問題を描いた「ゼブラーマン」では、そのあたりをかなり深く描いてあります。
僕の映画分析に驚いてくれて、そういうふうになりたい、と思ってくれたのなら、それは嬉しい話です。
物事を単純に見て、深く考えないのは「楽」ではあるのですけど、「面白く」はなりません。
東大生を見れば「頭いいんだろうな」と思い、ギャルを見れば「ヤリマンなんだろうな」と思ってしまうような人間でいると、脳はだらけていくものです。
何にでも簡単なタグを着けて分類して処理して済ませていると、脳は「だらしない脳」のまま「世界の面白さ」に気が付かなくなっていくのです。
どうして「深く考えない脳」の人になってしまうのでしょう?
これはおそらく幼児教育が大きいんじゃないかと思うのです。
幼児の時に、アリの行列を何時間も見つめているとします。その時に近くにいた大人に「何があったの?」「どう思ったの?」と聞いてもらえたのか?
もしくは「汚いから触らないで」とか「時間の無駄よ」とか、ましてや「そんなの見ても何の得にもならないよ」とか言われたかで、その人の「感性」は大きく違ってしまうのです。
「りんごは赤く、空は青く塗ればいい」と、教える大人が「つまらない人」を作ってしまうのです。
こうなると「ラピュタはよくある少年冒険もの」とか「ピクサーは子供向けアニメ」とか言って終わってしまう人を責められません。
でも、「そういう事に気がついた」というのが大きいのです。
物事を深く、面白く、味わうためには、「なんで?」という気持ちを大事にする事です。
「何で生きてるんだろう?」「僕はどこから来たんだろう」「君は何を考えているんだろう」
「猫はどんな夢を見るのだろう」「理想の社会ってどんな社会だろう」
「100年前の人ならどう思うだろう」とか、「たくさんの疑問符」と一緒に生きるのです。
「そんなのお金にならない」とかいう種類の考えが、そういう生き方の邪魔になる事もあります。
多くの「疑問」は、すぐにはお金にならないものだからです。
でも、多くのビジネスの根源には「これって何だ?」とか「どうすればもっと・・」とか「なんで?」から始まっているものなのです。
自分がもし「お金の損得でモノを考えるタイプの人」であれば「経済の側面」からでも物事を深く、独自の考えで見ることはできるので、それは1つの「物差し」(ツール)として否定しなくてもいいと思います。
それはそれとして、新しい角度でモノを考えてみたらいいのです。
「なんで?」は人生を豊かにしてくれます。
「人はなぜ生きるのか?」という疑問にはいくつもの回答ルートがあります。
「宗教」「哲学」「科学」「文学」・・それぞれに「面白くて深い答え」があるのです。
そして、そんなふうに身につけた「おもしろ教養」は、アニメやアイドルや、唐揚げにでも関連付けて「おもしろ論」を生んでいきます。これは最高です。退屈しません。
僕は子供の頃「何で人は生きるの?」みたいな事を言っていると、多くの人に「普通そんな事、考えないよ」と言われました。
僕にとってそんな彼らは、ずっと「敵」でした。そして長い間「なんで?」を面白がる「僕の味方」を探してきたのです。
やがて出会った沢山の「味方」は、みんな苦労をしてきた人達だったけど、最高に面白い人達でした。
あの頃「敵だった人達」は、今の僕には「可能性を潰されてきた気の毒な人たち」に見えています。
そして、早く「世界の面白さ」に気づいてくれたらいいのに・・と思っているのです。

山田玲司

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企画編集:山田玲司
矢村秋歩
発  行:株式会社タチワニ
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