絶望に効くお薬処方箋 漫画家 山田玲司 公式サイト

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コラム 2017.07.29

【第73号】それでもモテたいし、お金も欲しいし、誉められたい、という気持ちをどうしたらいいのか?

山田玲司のヤングサンデー 第73号 2016/2/29
それでもモテたいし、お金も欲しいし、誉められたい、という気持ちをどうしたらいいのか?

 
もうね。
正直な話、3日は落ち込んでました。
そうです。僕の愛する「老荘」が、先週の放送で上手く伝えられなったんでね。
ファミリーのみんなにも申し訳ないし、今は亡き偉大なる先代にも申し訳ない。
なんて、苦悩したままソファーで朝を迎えたら久しぶりに風邪の気配です。
これはヤバイと思ってヨガに行ったらなんとかなったんだけど、心は落ち着きません。
この世なんて「蝶の夢」だとか言っていたくせに、情けねえ話ですよ。
流れで、漫画の担当編集者に「今週の特集は老荘思想だったんだよ」と言ったら
「自由な番組ですね」と言われました。
言われてみれば、確かにそうだ。アニメとアイドルばっかりのニコ生で「上善水の如し」なんて言われてもね。
反応あったとしても、せいぜい「お酒の名前ですよね」くらいだろうしね。
なので、もう少しわかりやすくしないと、付いてきてもらえなかったかな、とか、「老荘」を常備薬として「ヤバイ時はキメよう」なんていうノリにも無理があったかな、とか、逆にもっと本格的に真面目に解説したほうが良かったのかも・・・なんて、反省しきりでした。
とは言え、老荘を全く知らなかった人達の反応は面白くて、簡単には受け入れられない人も含めてちょっとした議論になったりしてて、それこそ予定調和ではない「覚醒コンテンツ」のいい所ですよね。
ヤバ過ぎる「老荘」
とにかく老荘思想は「強くなる」という事を「愚かだねえ」なんて、真っ向からバカにするのだ。
同時に「綺麗になりたい」とか、「偉くなりたい」とか「名を上げたい」なんてのも、「馬鹿の考えることだよ」みたいに言うのだから、それまでそういう生き方をしてきた人にとっては、自分の人生を完全否定されるのだから大変だ。
挙句の果てに「賢くなるな」「上手くやるな」とくるのが「老荘」だ。
簡単に言えば「ガチガチになってる木は折れるから、しなればいい」みたいなのが「老荘」なのだ。
「自分をどけて空間を作ればそこに自由と可能性が生まれる」という思想だし、最後は「どうせ人生は夢なんだから、まあ遊んでいきなよ」という思想でもある。
とはいえ、この国(ほとんどの西側及び中国)では、これとはまったく逆の事を教えられる。
「賢くなれ」「強くなれ」「上手くやれ」「金持ちになれ」「有名になれ」
なんてのが普通だ。
漫画でもアニメでも、ポップソングでも、脱力系以外は基本こっちの「上をめざせ」だ。
そこに水みたいに下をめざせ、なんて、実際「意味がわからない」と思う。
おまけに、そんなに呑気にやっていたら家賃も払えなくなってしまうし、考えなければ安いギャラで過酷な労働をさせられる羽目になるかもしれない。
そもそも人間には「欲望」があって、欲しいもの、したいことが山ほどある。
僕もそう。というか、僕は人より欲望が強い。「あれもしたいこれもしたい」という膨大な欲望があるからこそ、あれほどのボツにもめげずに漫画を描いて来られたのだ。
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欲望は「悪」か?
僕は欲望は悪だとは思っていない。
欲望は生命の源だし、人生を面白くするためのエンジンだ。
本当は女だの金だの冒険だの名声だのが「欲しい」くせに、そのための戦いにビビって、戦いもせず悟った顔して「そういうの自分はいいッス」とか言ってるほうがみっともないと思う。
自分はエピキュリアン(快楽主義者)で、そのための冒険でドキドキしていたいと思っている。
そして、やりたくない事はしたくないので、常に失敗の不安にかられていて、心が苦しい。
だからこそ「ブレーキ」として老荘が必要なのだ。
今回の放送で何度も「老荘をキメる」と、言っていたのも、老荘と正反対の「不適切な欲望」を抱えているらこそ、老荘という「思想の薬」をキメていなければ、もたなかったのだ。
100個のケーキ
この欲望ってのは際限がなくて、快楽にも「慣れ」がきてしまう。
そしてそもそも「自分」が欲しくて頑張ってきた事が、自分を苦しめてしまうこともある。
いくら自分がケーキが好きでも、1度に100個もケーキはいらない。
むしろ多すぎるケーキは自分を不幸にしてしまう。
「あいつより良く思われたい」なんて思いも行き過ぎると、周囲を敵だらけにしてしまう。
お腹がそこそこ満たされたら、そこで「老荘ブレーキ」をかけて、誰かにゆずればいいのだ。
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「誰かに勝ちたい」という気持ちの処方箋
同時に「誰かに勝ちたい」という欲求もまた面倒な欲望だ。
誰かに勝てば、誰かが負ける。だからと言って勝ち負けのない世界が「面白い」とは思えない。
でも、際限のない競争は確実に人を不幸にしてしまう。
「勝てなければ終わり」の資本主義社会で自殺が収まらないのもそのせいだ。
営業成績のいい人だけが幸せ、という仕組みは多くの人を追い詰める。
たとえその時成績が良くても、その状態をキープするのは大変だし、必ず終りが来る。
そして、その問題で1番深刻なのが環境問題だ。
みんなが競って魚を捕らなければ、お金が貰えない仕組みの中では、いずれ魚はいなくなってしまう。
競争に勝つために草木を伐採して、廃棄物を垂れ流ししていると、売り上げは上がっても人間は病気になる。
僕は環境問題の漫画「ココナッツピリオド」を描いている時に、この問題に対峙して苦しんだ。
そこでまず「認めよう」と思ったのが、「それは面白い」ということだった。
「人と競うのは楽しい」のだ。
だからこそ、その上で「最悪の事態」を避けるための「ブレーキ」が必要だと思ったのだ。
「少欲」で「ゲーム」をしよう
仏教でも、この欲望に関して「完全に消し去れ」とは言ってない。
そんなの無理だから、欲望は少なくすればいい、と言っているのだ。
これが「少欲知足」というやつで、まあほどほどで満足しようよ、と言うわけです。
もう1つ、ほとんどの事は「ゲーム」だと思うことです。
ゲームであって、遊びであれば、その結果がどうでも折れなくてすむからね。
人生は蝶の夢にすぎないものなら、良い時もわる時も「遊びの1部」という話。
負けないルールのゲームが面白いか?
負けがあるからゲームは面白い。
「負け」があるから人生は面白いのだ。
「不安」も「欲望」も全部受け入れて、ヤバくなったら「人生なんか、蝶の夢」なんて言って、勝負に負けて、自分が役立たずだと思う時には「無用の用」とか言っていれば、死ななくてもやっていける。
これが「老荘キメておく」という事です。
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では、皆様、今週もどうかお幸せに。
 山田玲司

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企画編集:山田玲司
矢村秋歩
発  行:株式会社タチワニ
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