コラム 2018.05.04

【第153号】ホームランの打ち方

山田玲司のヤングサンデー 第153号 2017/9/18
ホームランの打ち方

 

 

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おことわり:このコラムは、ニコニコチャンネル「山田玲司のヤングサンデー」で配信されているメルマガを全文転載してお送りしています。転載期日が2018年4月下旬以降の号は、テキストのみを抜粋・転載しております。

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メジャーリーグを見ていたら、本当に「凄いやつ」がいた。

 

いや、そもそも「メジャーリーグ」って場所自体が「世界中の凄いやつ」を集めた「バケモノ集団の闘技場」だから、そんな「凄いやつ」なんかいくらでもいるんだけどね。

 

むしろ「バケモノ」でないと入れない世界なんだけどね。

 

そんな「ポケットに入らないモンスター達」のバトルを呑気に観る幸せが、メジャーリーグ観戦なんですがね。

 

男の名は「アーロン・ジャッジ」

メジャーを観戦している人ならすぐにわかると思うけど、ニューヨークヤンキースのルーキーにして圧倒的な主力打者。

 

2メートルの大男で、とにかくバカみたいに打ちまくる。

しかもまだ25歳。

 

今年も前半戦には打率.329、30本塁打、66打点という大活躍をしていた。

とにかく「出れば打つ」イチロー以来の外野手新人王とMVPのダブル受賞をしたという。

 

確かに今年はボールの規格が変わって「ホームランが出やすくなった」という条件もあるだろう。

とはいえ、他の選手も同じ条件で戦っているわけだ。

ホームランの多い今シーズンの中でもジャッジは圧倒的だった。

 

しかし、そんな「世紀の天才」が夏を過ぎてから嘘みたいに打てなくなった。

 

7月8日から8月22日まで37試合連続三振して、野手のメジャー「ワースト記録」を更新する。

 

37試合連続!

 

相手球団が彼の弱点を研究しまくって、それまでのやり方が通用しなくなったのかもしれない。

8月にはとうとうジャッジは先発を外される。

「伝説的選手の登場」だったはずが、一転「悲劇のルーキー」になってしまうのか?

そんな夏だった。

 

ところが、その「悩めるスーパールーキー」ジャッジが最近になって復活してきた。

いつもの威圧的な構えから、とんでもない飛距離のホームランを量産し始めたのだ。

そんな彼がインタビューで、これまた「すごいこと」を言っていた。

 

彼は「ホームランの打ち方」を解説していたのだ。

 

「ボールの7時のところを、その軌道に合わせて振り抜くんだ」なんて言ってる。

 

ちょっとまて、ジャッジ。

 

てことは君はいつも「ホームランだけ」を狙って打席に立っているのか・・・。

 

これはちょっと興味深い。

野球を少しでも知っている人であれば「ホームラン」がそんなに簡単に出るものではないと思っているのが普通だ。

 

ホームランは「特別」なものだ。

だからホームランバッターはスーパースターなのだ。

そんなにめったに出ないモノを目指すより、手堅く当てに行って塁に出る方が大事だと考える方が普通だ。

そんな中「たまたま」スタンドに入ることがある。それが「ホームラン」なのだ。

 

それはどこか「偶然」の出来事で、「努力」と「運」が結びついた時の「特別賞」みたいなものだと、選手も観客も思っているのが(主なる)日本の野球だった。

 

そういえば昔、サッカーについても似たような事を聞いた。

(当時の)日本のサッカーは闇雲にボールを蹴って、上手く行けばゴールの中に入る、と思ってプレイをしすぎるって話だ。

ヨーロッパのトータルフットボールでは「闇雲なシュート」は許されない。

 

偶然のゴールを期待してサッカーをしている人同様に、

「たまに打てればいい」と思っている人は、めったにホームランは打てないだろう。

 

「ホームランを打つ」のが目的の人は、常に「どうしたらホームランが打てるか?」という具体的な行動をするはずだ。

 

その試行錯誤の中には「休養」や「分析」の時間も入るだろう。

やたらとバットを振ったり走り込んだりするだけではホームランは常に「偶然の産物」のままだからだ。

 

なんだかこれ「人生」の話にも通じる点がある。

 

人は時々自分が「何を目的にしているのか?」ってのを曖昧にしたまま、闇雲に「努力」をしてたりする事がある。

 

「いつか打てるさ、だって僕はアーロン・ジャッジだもん」

 

なんてのもいいけど、それで何の試行錯誤もしなかったら、ジャッジは復活できなかっただろう。

 

一方で「振ればホームランになる時もある」という「お気楽哲学」も捨てがたい。

それに人生には「コントロール不能」の部分がほとんどでもある。

 

でも「それ」ばかりだと「私の目的はホームランです」と言う選手にはかなわない。

少なくとも「ホームランの数」ではね。

 

僕はよく、迷っている人に「君はどうしたいの?」と聞く。

 

なのに自分自身が時々「僕はどうしたいんだ?」みたいになっている事がある。

 

そういえば、巷では戦争だの何だの騒がしい。

勇ましい事を言う戦前の人みたいな意見が溢れてる。

 

そんな時代だけど、ジーン・シャープという人がこんな事を研究している。

非暴力で問題を回避する方法だ。

 

その人によると非暴力で問題を解決するための方法は198種類もあるというのだ。

 

これもまた「平和解決」という「明確な目的」から始まっている。

198の中には「服を脱ぐ」みたいなものまであるので、全てに効果があるかはわからないけど、戦術は多い方がいいし、その中には「抜群に効果のある方法」も見つかるだろう。

 

何より「明確な目的」はいい。

「ホームランを打つ」「非暴力で平和にする」それが「目的」って。

友達になりたいよ。

 

それはともかく。

最近「自分がなぜ野球を観たがるのか?」がわかった。

僕は「誰かを応援して盛り上がっている人達」を観たいのだ。

自分はお金が貰えるわけではないのに応援する人達と、それに応える選手達。

 

ブーイングもするし、いいプレイをしたら我が事のように喜ぶ。

チームが勝っても観客はお金を貰えないし、逆にお金を払ってる。

プレイは「競技」なので「勝ち負け」は保証されない。お金と時間をかけて「負け」を観るハメになることもある。

 

バカみたいだけど「それ」を楽しむ。

 

なんだか「功利主義」との「粋な戦い」にも見える。

 

先日のドジャース戦は、悪天候で試合が伸びて、試合開始が午後9時を過ぎた。

 

深夜12時になっても試合は続く。終電組が帰った後も応援は続く。

スタンドには居眠りする人達が増える。それでも帰らない。

試合が終わったのは夜中の2時過ぎだった。

 

「やれやれ」という顔でみんな帰っていく。選手も観客もフラフラだけど、不満な顔は見あたらない。

 

そんな光景を観ながら僕は「人間っていいな」と思うのだ。

 

山田玲司

公式サイト:漫画家 山田玲司 公式サイト
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企画編集:山田玲司
平野建太
発  行:株式会社タチワニ
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