【第154号】男でいくか、女でいくか
男でいくか、女でいくか
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おことわり:このコラムは、ニコニコチャンネル「山田玲司のヤングサンデー」で配信されているメルマガを全文転載してお送りしています。転載期日が2018年4月下旬以降の号は、テキストのみを抜粋・転載しております。
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東村アキコの漫画「海月姫」が完結した。
この漫画は僕にとっても特別な漫画の1つだ。
海月姫は、めったに人の漫画を読まない自分が、たまたま本屋で見つけて、帯に書かれた「オタク再生」というコンセプトに惹かれて買った「珍しい漫画」だったからだ。
この漫画は想像を超えて面白く、思わず作者の過去作「ひまわりっ」まで探して読んだ。
こんな事はめったにないのだ。
「ひまわりっ」という漫画は、海月姫のコミックスにあった広告ページにイラストが載っていたので知った。
そのイラストに庶民的な3人のキャラクターが肩を組んで騒いでいる様子が描かれていて、着ている服になぜか「しんらいかんけい」と書いてあるのだ。
なんというセンス・・
僕はいてもたってもいられなくなり、フラッシュの取材を理由に東村アキコに会いに行った。
そして彼女は僕に会うなり「すみません、パクりました」と言ってきた。
全く気が付かなかったけど、彼女は僕の「オタク再生漫画」であるBバージンを読んでいてくれていたのだ。
そこからは、あまりの共通点の多さに驚き、なんだかんだと長い付き合いになっていったわけだ。
アッコはその時僕のスケブに「人生は祭りだ!ふぅ~!!」と書いてくれた。
もう何もかもが今に至る「予告編」みたいだ。
今回改めて「海月姫」を読んでみて思ったのは、女装の美男子キャラ「蔵之介」の魅力についてだった。
蔵之介は「大臣の息子」という行き過ぎたセレブであり、親に反抗して女装姿で生きている、という中々のトリックスターだ。
そんな彼が「男を拒絶する女たちの館」に入り込み、彼女たちの人生を変えていく話が海月姫のメインストーリーだ。
蔵之介を見ていると、このキャラクターが明らかに「アッコの化身」であることがわかる。
アッコの中にいる「イケメン」が、グジグジして外に出られない「腐女子」たちに「そんなんじゃ人生もったいないぜ!」と叫んでいるわけだ。
主人公の気弱な女の子(海月)もまた、アッコの中に住んでいる「弱い女」の化身だろう。
この漫画は、弱い「女の子」の自分を、強い「男の子」の自分が開放していく話になっているのだ。
「タラレバ娘」同様、この作品もまた「繋がれた犬の開放」を描いているわけだ。
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そんな事を考える少し前に、この話に繋がる経験をした。
放送前に少し時間があったので「せっかくだから久しぶりに湯島天神にご挨拶に行っておこうかな」と思い行ってみた。
湯島は御徒町や上野の隣でほとんど同じエリアにあるからだ。
子供の頃によく来たらしい湯島は、当時の記憶は曖昧なものの、なぜか落ち着く、懐かしい場所だ。
天神さまにお参りしようと、路地を歩いていると「女坂」という緩やかな階段にたどり着いた。
そこを上がると、もう1つ「男坂」という恐ろしく急な坂(階段)もあった。
(上野方面から)天神さまにお参りするには「男坂」と「女坂」の2種類の選択肢があるわけだ。
一気に上がりたい時には男坂を、ゆっくり上がりたければ女坂を、なんて、なんかいい。
こんな風に人間は自分の判断で「男でいくか女でいくか」を決めていいし、変えてもいいのだ。
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湯島天神には泉鏡花の「筆塚」がある。牛も待ってる。
そこは「講談発祥の地」でもあるらしく、これも何か縁が深い。
お参りを済ませて、男坂を降りると「聖天様」のお寺「心城院」が待ってくれていた。
「壊れる前に欲を叶えてやるよ」でおなじみの、浅草待乳山聖天様と同じ仏様だ。
池には亀。
僕は亀が大好き。Bバージンは「亀オタクの話」
ふと、手塚先生が「人に伝えたければ、自分の好きなものを描け」と書いていたのを思い出した。
「好きな事をやれば上手くいくんだよ」と、言われた気がした。
山田玲司
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平野建太
Written by
ナオキ
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