コラム 2017.09.12
【第117号】先週の放送で起きていた事件
山田玲司のヤングサンデー 第117号 2017/1/9
先週の放送で起きていた事件
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皆様、年越しのカウントダウンから、3日後にまた3時間近くも放送してしまって、なんかすみません。
その上かなりの数の人がこの「年越し放送」に付き合ってくれて、ホントにうれしかったです。
「正月なんだからみんなそれぞれ忙しいし、ニコ生なんて」みたいな遠慮はいらなかったんだな、なんて思いました。
さすがにスタッフのみんなには正月返上で申し訳なく思ってたんですけどね。
でもこのおかげでスタッフ、出演者、来てくれたファミリーの皆様(主題歌を作ってくれた人まで)と一緒に上野を散歩して初詣に行けたんで、いい思い出ができました。
放送の方は、絶望に効くクスリ特集だった「真面目なカウントダウン放送」だけじゃダメだよな、と思って、4日の放送は「箱根駅伝」と「死語」の話で「ふざけ倒した放送」のセットにしてみました。
それは良かったんですが、4日の放送前に「ちょっとした事件」が起きていたので、その話をします。
〜おっくんの友達〜
「今日、おれの友達がイギリスから来てるんで、連れて行ってもいいですか?」
放送の前には雑談しながらその日の放送の打ち合わせをするんだけど、その直前におっくんからこんなラインがきた。
久世を連れてきた時もこんな感じだったので、ちょっと楽しみだった。
しかもその友達はイギリス在住で、波乱の人生だという。
なんだかかなり面白そうだけど、気をつけなければいけない。
僕は「絶望に効くクスリ」時代の取材癖が抜けていないので、面白そうな人を見つけると何かと話を聞き出そうとしてしまうのだ。
下手をすると放送前にエネルギーを使い切ってしまうかもしれない。
〜ヨンちゃん登場〜
そんなわけで、そのおっくんの和歌山の中学生時代からの友人「ヨンちゃん」はやってきた。
「ヨンちゃん」は、おっくんと同級生の34歳。
決してイケメンではないのだが、愛想は抜群。本人はダイエットに成功した、と言っているものの、いい感じのリラックマ体型で短髪。
「久しぶりに日本語話せるわ〜」と、ベタベタの関西弁。
大阪のやり手の中小企業の社長みたいな雰囲気もあるんだけど、親は大学の先生で、本人も政治や文化論などの「深い話」が大好き。
そして彼の(前の)奥さんは「スコットランド人」
今のパートナーは、イギリスで知り合った「タイ人女性」なのです。
しかもこの「タイ人の彼女」には切るに切れない「働かない夫(イギリス人)」がいて、今はイギリスの家でその3人で一緒に暮らしているのです。
なんてややこしい!
こういう国際色溢れる話は「外資系グローバル企業」とか「国連職員」とかで働くのを夢見て海外留学していたようなタイプの人や、子供の頃に海外で暮らした経験のある「帰国子女」みたいな人では、無くはない話です。
でもこの「ヨンちゃん」
スコットランド人の(元)奥さんと出会ったのは日本の富山県なのです。
〜無くした感覚〜
当時、富山の大学の学生だったヨンちゃんは、外国の人が飲みに来るパブに飲みに行って、そこでスコットランド人の彼女と出会って、その流れで2人でイギリスに行き、結婚してイギリスの会社で働くわけです。
この話はかなり珍しいんだけど、僕が引っ掛かったのは「国際的に生きる人生」ではなく、他の部分でした。
ヨンちゃんは当時の奥さんも今の彼女も、最初は「なんやねんこいつ」と思って、あんまり魅力を感じなかったと言うのです。
何だかんだ言って、色々な話をしているうちに「なんやこの人、面白いやん」と思い、そしてそれがやがて恋愛感情になった、なんて言うのです。
こんな事は昔は「当たり前」だったと思うけど、最近はあまり聞かなくなった気がするんですよね。
集団アイドルの中に「好みの女の子」を探すのが普通、という青春を過ごしてきた日本人の男は、とにかく女を「見た目」で決めようとする。(おっさんにもそんなのが多い)
おまけにそこに「若いほどいい」という思い込みが入るので、若くもなく、見た目も普通の女の人を見る時は、くらたまが言っていたように「女」じゃなくて「家具」を見るような目で見ているのが日本の多くの男です。全部がそうじゃないけどね。
女の方もまた、若い頃は「見た目がカッコいいのがいい」とか言っていて、将来が不安になると、収入や学歴とかの「スペック」で選ぼうとする人が多い。全部がそうじゃないけどw
どちらも「パッと見」で判断してしまって、「じっくり話して相手を知る」なんてことが少なくなった気がする。
考えてみれば、学校のクラスメイトで異性だと「じっくり話す」なんてことはほとんどない。
なのでその評価は「見た目」とスポーツや成績の結果みたいな「スペック」で判断されてしまう。
これを「合コン」やら「飲み会」なんかでも続ける人も多い。
つまり日本人は(見た目とスペックの低い)他人を知ろうとしなくなっているのだ。
ヨンちゃんの話に戻ろう。
ヨンちゃんはスコットランド人の奥さんとの間に「気持ちの隙間」を感じていた。
お互いの仕事が違いすぎるせいもあって、2人の関係は以前とは違う感じになっていたという。
そんな時にヨンちゃんは職場で「タイから来た女の人」と友人になる。
その頃「英語力が弱い」と上司にきつく言われていたヨンちゃんは「この人も英語が得意じゃないし、この人に英語を教えて(教えられて)いるうちにもっと英語が上手くなるんちゃうやろか?」なんて感じで、その「人妻のタイ人」と友達になろうと思ったそうなのだ。
そんなこんなで彼女の話を聞くと、どうも彼女の旦那はまったく働かず、男女としても終わっている状態らしい。
彼女には2人の子供もいて、つまり家族4人の暮らしを1人で支えていて苦しいという。
こんな話を聞くと逃げ出す日本人は多いはずなんだけど、段々とそのタイ人の彼女の人間性に惹かれヨンちゃんは彼女を好きになった、というのです。
それから2人はつきあうようになるわけです。
ヨンちゃんは元奥さんとの関係を解消して、「旦那を見捨てられない」という彼女のために、家の1部を「マッサージ店」にして、彼女に「タイ式マッサージ」のお店をやらせてあげたのだ。
おまけに、働かない(働く口もない)居候と化した「彼女の元旦那」に「あんたもマッサージの勉強してここで働いたらええ」と、お金を出して彼を研修に出してあげたのだ。
「ええええ、何その話?」と思うでしょう?
僕もそう思って聞いていたんだけど、言ってその「元旦那」はマッサージの技術を身に着けて、ちゃんと働くようになったらしいのです。
この話は僕にとって少しばかり「衝撃的な事件」でした。
何しろこの人の話には「国境」や「人種」の壁がない。単に「人間と人間」の話で「家族とはこういうものだ」とか「男女とはこうでなくてはいけない」とかの「固定概念」を超えている。
海外に行くとそういう話は普通に聞くけど、しばらく日本を出ていないので、この感覚は新鮮だった。
ずっと感じている「社会が崩壊していく予感」が、いよいよ現実味を増してきた時代になって、「理想の国」だの「理想の家族」だの「理想の男女関係」の過去に作られた「固定観念」はもはや人生を窮屈にして苦しめるだけになってきた。
どうしたらええんや?
「そんなもん、じっくり話したらええやん」
「できることはしたらええんや」
ヨンちゃんはそう言っていた。
「見た目のいい若い女」もいいし「イケメンでハイスペの男」もいいのはわかる。
でも、付き合っていくのは、社会が認めた「型」じゃなくて「人間性」なんだよね。
今年の漢字は「転」だと、僕は言いました。
今まで社会が「良し」と認めてきたことの全てが見直される時代が本格的に来たのです。
イギリスで日本人とタイ人とイギリス人が3人でマッサージ屋さんをしてもいいんです。
なんて面白いんだ。
さあて、暗い時代に明るく行きましょうかね。
今年もよろしくね。
山田玲司
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発 行:株式会社タチワニ
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Written by
市川 剛史
どすこい喫茶ジュテーム