コラム 2019.03.01

【第204号】「嘘」の使い方で決まるものとは?

山田玲司のヤングサンデー 第204号 2018/9/17

「嘘」の使い方で決まるものとは?

 

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おことわり:このコラムは、ニコニコチャンネル「山田玲司のヤングサンデー」で配信されているメルマガを全文転載してお送りしています。転載期日が2018年4月下旬以降の号は、テキストのみを抜粋・転載しております。

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〈嘘なしで生きられるか?〉

 

「大人になるのはいつだろうか?」という問題がある。

 

人は何度も境界線を超えて大人になるのだけれど、答えの1つは「仮面」を使う時だと思う。

 

そもそも学校の先生に「おはようございます」なんて言ってるのも、100%本心ではない。

それは先輩に言う「お疲れ様です」も「勉強になりました」なんかも同じ。

 

小学校に入ってすぐに「嘘」を演じる羽目になるわけで、こんな境界線は何度もやってくる。

 

この国のコンテンツで、最強の武器と言えば「無垢」だ。

 

「少年の心」と「汚れなき少女」が最強という世界なので、それがデフォルトの世代には「本心じゃない態度」で生きるのは「嘘」を抱えるみたいで抵抗があるだろう。

 

「ああ・・大人になってしまった・・」

みたいな軽い喪失感を感じながら「勉強になります!」なんて言い始めるわけだ。

 

「大人に媚びない」とか「男に媚びない」なんていう生き方もあるけど、この設定はさらに大変だ。

 

「嘘はつかない」というのは、純度最高のスローガンだけど、これはもう最高レベルに難儀だ。

 

「愛想笑いもしない」というルールを背負って「真実」だけを口にするなんて、むき出しの真剣を振り回して生きる様なものですからね。

 

そんなわけで「素」で生きるのは不可能に近い。

 

「これはないよな」と思っても「ありがとうございます」なんて言わないと、自分だけでなく他の誰かも怪我をするような事だって多いのだ。

 

そんなわけで、大人ってのは「仮面」の下で泣いている生き物だ。

 

社会に命じられたストーリーの役を演じながら「違うと思うけど子供たちのためにやるしかないんだ」なんて泣いてるのだ。

 

今回の放送でレイモンさんがプレゼンしてくれた「美しい嘘」というのはまさにこれにあたる。

 

 

〈隠したり晒したり〉

 

僕が描いた漫画「ゼブラーマン」はまさに「そういう物語」だ。

この漫画ではゼブラーマンという「仮面」をかぶっている時だけ「本当の自分」になっていて、普段は「素顔のまま」仮面をかぶって「嘘の自分」を演じている男が主人公になっている。

 

映画「アメリカンビューティー」の主人公は、ゼブラーマンになれないで死にかけていた男の話だった。

 

プロレスラーやミュージシャンはどうなのだろう?

ステージの上が本当の自分なのか?普段の自分が「仮面」なのか?

 

おそらくそのどちらも「本当の自分」であり「嘘の自分」だと思う。

そうやって「隠したり晒したり」しながら、現実と戦っているのだ。

 

僕もそうだし、ほとんどの人がそうだと思う。

 

〈嫌な嘘〉

 

とは言え「嘘」には「嫌な嘘」も多い。

自分を大きく見せるための嘘や、気を引くための嘘なんかもある。

これが許されるのは10代までだろう。

 

嘘について重要なのは「質」だと思う。

質の悪い嘘にうんざりしていると、どうしても「いい話」が気に入らなくなる。

「いい話」をしてるフリして、人を騙す様な人間が得をしてる社会だからだ。

 

それでも「優しい嘘」は明らかにある。

「余命の告知」なんかはその典型だろう。

深刻な病気の予測を、本人には「良くなってる」なんて言う。

苦悩を抱えるのは「嘘をついた方」になる。

 

ここは議論が割れる所で、私は真実を言って欲しい、と言う人もいるとは思う。

 

でもここで言ってるのは「嘘」が抱える優しさについてだ。

「誰かを守るための嘘」は実に多いのだ。

 

「偽善」とはねつける前に「優しい嘘」を容認して「嘘の背後に何があるのか?」をイマジンして欲しい。

 

〈嘘で人が見える〉

 

前に書いたかもしれないけど、脚本の基本の1つに「人間は嘘をつく生き物だ」というのがある。

人間は嘘を使わないと生きていけない「業」を抱えた生き物で、その無様で不純な性質が「美しく」「愛おしい」のだ。

 

なので「嘘」をつく時のキャラクターは魅力的に見える。

 

思い出すと、僕の「Bバージン」も「アガペイズ」も「NG」も「ゼブラーマン」もバレたら終わりという「嘘」を抱えている。

 

そういえば中島みゆきさんの初期の名曲に「うそつきが好きよ」というのがある。

 

自慢話は嫌い

 

約束事は怖い

 

嘘を抱えた両手 そっと開けて 口説いてよ

 

〈うそつきが好きよ〉

 

20代前半で書いたとは思えない、本当に深くていい歌詞だ。

 

自分を大きく見せるための嘘

相手を気分悪くさせないための嘘

 

全てにおいて「本当の事」など人間にはわからない以上、

 

「嘘の使い方」でその人の価値が決まるのだと思う。

 

山田玲司

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企画編集:山田玲司
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