コラム 2017.09.18

【第123号】「面白いやつ」の正体とは?

山田玲司のヤングサンデー 第123号 2017/2/20

「面白いやつ」の正体とは?

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「盛り上がる話」ってのがある。
飲み会でもお茶会でも、打ち合わせの合間の雑談でも、そういう「盛り上がる話」があると、そこにいた人はみんな何となく「今日は楽しかった」という気分になる。そういう話。
でも、みんながみんな「話のプロ」なわけじゃないから、いつでも誰でもそんな「面白い話」ができるとは限らない。
人数だけは集まっているのに、何となく普通に芸能人の話で終わったり、その場で1番パワーのある人が話す、買い物がどうとか、上司がムカつくとか、イケメン見た、みたいな話に付き合わされて、みんな内心「うんざり」してたりね。
僕はそんな、なんとなく盛り上がらない場が昔から耐えられない人間でした。
せっかく集まったんだから、みんなが楽しい気分になれる話題で盛り上がりたいわけです。
今でこそ僕の周りには「面白い人」で溢れているので、自分が頑張らなくてもいいんだけど、学生の頃はとにかく「面倒な自意識」を抱えた「漫画とアニメのオタク達」が中心の漫研なんかにいたので、何かと「イライラ」しておりました。
そうです。先輩も含めて、とにかく雰囲気が暗いし、みんなが自分の殻に閉じているんです。
おまけに、せっかく盛り上がりそうになってる話題を「それ知ってる」みたいなつまんない突っ込みで消火したりするヤツもいたりしてね。
そこで(18歳の)僕は何とかその場を盛り上げようと、自分の失敗話で盛り上げていくことにしました。
その時、特に盛り上がったのが、自分の「恋愛話」でした。
彼女がいたら「良い事ばかり」とは限りません。恋愛という「ギリギリの駆け引き」なんかをしていると、本当に多くの「かっこ悪い出来事」が起こるわけです。
そんな恋愛の時に体験した「自分のかっこ悪い体験談」ほど、みんなにバカみたいに受けるのです。
そんなこんなで、必死に恋愛自爆話を漫研でしていたら、その中にいた漫画家の先輩に「山田は恋愛話が面白いからそういうの描いたほうがいいよ」と言ってもらって、恋愛バカ話から始まる「Bバージン」を描くことになったわけです。
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〜人の不幸は蜜の味理論〜
今思うと、僕の恋愛話が盛り上がったのには理由があって、その話が「自慢」ではなく基本的に「自爆」だったからだと思うのです。
とにかく「自慢話」なんか誰も聞きたくないものです。自慢話がしたい時は「ゴメン自慢していい?」と聞くくらいの配慮がいるんです。
人の不幸は蜜の味、とか言うとなんか性格の悪いおばさんのお茶会みたいに思えるけど、人ってそういうものです。
自分の心に余裕のある人であれば、誰かの幸せを心から喜べるかもしれないけど、そんなに心に余裕のある人ばかりじゃないもんね。
なので、僕が考える「最強のおもしろ話」は、なんと言っても「失恋話」でしょう。
今でも思い出すのが、同じ年の友人に久しぶりに会ったときの事です。
彼はとても元気なヤンキーだったんだけど、年を取るにつれて仕事も恋愛も遊びもパッとしなくなってきて、会っても話題もなく、昔の話しかしなくなってました。
その頃「恋愛」で地獄を経験していた僕は、彼に最近自分に起こった「恋愛系の不幸話」をしました。
彼は目を輝かせて、思い切りその話に食いついてきたわけです。
「俺より悲惨なやつがいるぜwww」みたいな感じです。
「なるほどなあ・・」なんて思いつつ、どんな話にみんなが盛り上がるのか?について、改めて考えてみました。
自分の経験で考えると、飲み会とかで盛り上がる話はこのあたりの話です。
1位 失恋でジタバタした話(泣いた話)
2位 「好きな人に告白したいと思っているんだけど、どうしよう?」の話
3位以下は同じようなもので、「彼女とケンカしてて最悪」とか「付き合ってる人以外に好きな人ができた」とか「こんなエロい事考えてた」とか
基本的に「情けなくて共感できて笑える話」なんですよね。
ヤンサンでおっくんがキラキラして盛り上がる「人生とは何だ?」みたいな話も、僕は大好きなんだけど、飲み会みたいな席ではついて行けない人もいるんで、そこは相手次第です。

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〜失恋話はなぜ面白いのか?〜
失恋話が面白いのは、それが当人の体験した「冒険の結果」だからでしょう。
好きになったり、デートに誘ったり、告白したり、好きな人と一緒にベッドに潜り込んだりする事の全てが、当人が主人公の「冒険」です。
「どこそこの誰々はこんならしいよ」みたいな話で盛り上がることもあるけれど、何かを体験した「当人の話」にはかないませんからね。
しかも「恋愛」は誰にとっても「のっぴきならないもの」です。
大抵の人が「好きになった人」がいるわけで、「その人に好きになって欲しい」なんて思ったことがあるわけで、中には「結果的に上手くいかなくて泣いた」みたいな経験をしている人もいるわけです。
「傷つくのが怖くて行動に出られない人」ももちろんいます。
そういう人にとっても「失恋体験を笑い話にできている人」は救いでしょう。
恋に破れても笑える事を、その人は証明しているからです。
そういえば「過酷な旅の話」も面白い話ですね。それも本人が生きて帰ってきて、それを「笑い話」にして話してくれるからこそ面白いわけで、これまた本人が主人公の「冒険」だからおもしろいんだよね。
失恋の話が面白い、という事を考えていたら、前回取り上げた「面白い人になるには?」という話に繋がっていました。
恋愛をするしないに限らず、「面白い人」は、自分が主人公で、この世界を「冒険」している人でしょう。
どこにも行かず、何も挑戦しないのに、なぜか「この人は面白い」という場合は、「何もしない」という「冒険」を必死でしているのかもしれません。
人は「何もしない」状態には中々耐えられませんからね。
そんなこんなをまとめてみると「面白い人」ってのは「必死に生きてる人」なのかもしれないですね。
ところで、「失恋の話」で、聞いてて困る場合もあります。
それは失恋の傷があまりに生々しく、当人が「まだ笑えない状況」で、その話をしている時です。
そういう時は当人はとても「相手を楽しませたい」なんて気分じゃないので、寛容に聞いてあげるのが1番でしょう。
話は暗くなるし、何度も同じ話になるのですが、それも仕方ないと思って聞いてあげたら、今度は自分がピンチの時にその人が聞いてくれたりするんですよね。
「恋愛が怖い」という気持ちはよくわかります。
何しろ「心の痛み」は鎮痛剤が効きません。プライドだって傷つきます。
でもね。やってみた冒険は「結果がどうあれ」素敵な財産になるものです。
すべてが「武勇伝」になるのです。
(写真は僕が失恋で死にかけている時に友人が「王将の餃子」を差し入れてくれた時のものですw)
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ところで皆様、CICADAの応援、本当にありがとうございます。
僕も漫画だの放送だの絵本だのの「冒険」を全力でやりますよ。
では、春まであと少し、そっちも頑張ってね!

山田玲司

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企画編集:山田玲司
保田壮一
発  行:株式会社タチワニ
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