【第142号】「「ジャイアン」と「ウサギ」
山田玲司のヤングサンデー 第142号 2017/7/3
「ジャイアン」と「ウサギ」
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何度も聞かれてきた質問に「どうすればモテるんですか?」というのがある。
その時々で答えも変わってくるので、僕はそれを聞かれる度に「その時の答え」をもっともらしく話してきた気がする。
そもそも「モテる」なんて感覚的なものだし、時代や環境によっても変わるものなので、「これが答えです」なんてものは無い・・・とも思う。
ところが、先日たまたま観たフランスのドキュメント番組に「その答え」を見つけた。
いや。「見つけた気がした」というのが正しいかもしれない。
何しろそのドキュメンタリーは「4歳の子供」が主人公なのだ。
その番組は、児童心理学を研究している学者さんたちが、4歳の子供を10人くらい集めて、各自に小型マイクを付けて、その行動を観察していきます。
普段聞けない「4歳の子供と4歳の子供の会話」が聞けるのだ。
そこで学者スタッフはいくつかの実験をしていく。
「このケーキは食べたらいけませんよ」と言って、子供しかいない部屋に美味しそうなケーキを置いて、その様子を観察したり、まあ色々な状況に子供達を置いて、その言動を追うわけで、中々人間臭くて面白い。
その子供の中に、いわゆる「ジャイアン」がいました。
何でも自分の思い通りにならないと気が済まない子です。自分の欲望を抑える事も苦手で、食べたらいけないケーキを真っ先に食べたのも彼でした。
おまけに身体も大きく、威圧的です。
彼がいるために子供たちは引っ掻き回されます。
実験の最終日に大人達から5人の女の子にプレゼントが渡されます。
それぞれ綺麗な入れ物みたいなものをプレゼントされるのだけれど、なぜかその中の1人だけに入れ物に「チョコレート」が入っているのです。
なんという意地悪。
女の子はみんな4歳です。当然「私も欲しい」と言い出します。
大人はチョコをもらった子に「どうする?あげる?」と聞きます。
「これは・・私がもらったものだから~・・」と、その子は拒みます。
貰えなかった子の1人が「チョコは何粒入ってるの?」と言ってきます。
調べてみると、チョコは5つ。その場にいる女の子の数と同じです。
でもチョコをもらった子が、それを分けてしまうと、せっかくの「自分だけがもらったチョコ」はみんなのものになってしまうのです。
それでも彼女はそれに応じます。チョコをみんなにくばっていくのです。
まだ困惑ぎみではあるものの、他のみんなは大喜びです。
そこにあの「ジャイアン」が入ってきます。
「僕にもちょうだい」と言ってくるのですが、当然みんなは戸惑います。
ジャイアンは、サッとチョコを奪って自分の口に放り込んで逃げていきます。
その場はパニックです。
頑張って「チョコを分け合う決断」をした彼女は泣き出します。
しかし、その決断のおかげで女の子達は完全に彼女の味方です。
大騒ぎでジャイアンを追い詰めて、先生に言いつけたので、ジャイアンはタジタジです。
「謝りなさい」と言われて、謝ったジャイアンに彼女は言います。
「もうあんたにチョコあげない」
ああ・・なんかもう色々キツいなあ・・4歳にしてもうこういう地獄が始まってるんだよなあ・・・
なんて思って番組を見てたのですが。番組はまだ終わりません。
何とそのジャイアンは、事件が終わった後に自主的な行動に出るのです。
彼は、お絵かき用の画用紙に「ごめんなさい」と書き、その横に「ウサギの絵」を描いて、それを自分がチョコ奪った彼女にあげたのです。
彼女は聞きます。
「何でウサギ?」
彼は答えます。
「好きだったじゃん。ウサギ」
そうです。ジャイアンは彼女がウサギが好きだと言った事を覚えていたのです。
このまま彼女は恋に落ちるかもしれません。
実はこのパターン。少女漫画のテンプレなのです。
「なんて嫌なヤツ」から「いいとこもあるじゃん」になり「あたしの事、見ててくれてたんだ」となる流れです。
このジャイアンは「モテるジャイアン」でしょう。
「どうすればモテる?」の結論を4歳の子供達に教わった2017年の初夏です。
山田玲司
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平野建太
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ナオキ
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