【第156号】「ネアンデルタール人」になりそうな人のために
「ネアンデルタール人」になりそうな人のために
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おことわり:このコラムは、ニコニコチャンネル「山田玲司のヤングサンデー」で配信されているメルマガを全文転載してお送りしています。転載期日が2018年4月下旬以降の号は、テキストのみを抜粋・転載しております。
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ヤンサン3周年祭りのイベント放送は終わりに近づいていた。
僕はこのイベントのまとめに「ネアンデルタール人が滅んだ話」を用意していた。
要約すると、約20種類も現れた人類の祖先の中で最後に残ったのは「言葉が使えたホモ・サピエンスだけだった」という話だ。
当時栄えていた「もう1種の旧人類」ネアンデルタール人は、身体も大きく寒さにも強かったのに、たまたま「声帯の位置が高かった」ために「言葉」が使えず、仲間と情報交換できなかったために滅んでしまったという。
つまり「自分の体験」や「考え」を人と共有する事で、我々の祖先は生き残ったわけだ。
「言葉」は過去の人たちの経験を伝え「文化」を豊かにしていく。
ヤンサンで何時間も話し続けるという行為も、この延長にあるわけで、なんだかんだ「お話」していればそれだけでも「生き延びる可能性」は上がるわけだ。
本当に「話し会う」ってのは最高なのだ。
でもね。
「そんなに簡単に人と話すことはできませんよ」って人もいるわけです。
僕自身も「今は誰とも話せない」なんていう時期があったし、今も時々そうなる。
周りの誰かに「あなたはどう思う?」と聞ければいいだけなんだけど、それすら難しい時だってあるのだ。
実際そんな風に聞いてみると、ほとんどの人が「待ってました」とばかりに「持論」を展開してくる。
自説を振りかざして誰かを批判したり、社会を憂いたりして、最後には「お前はこういう所がダメなんだよ」なんて説教してくる人までいたりする。
せっかく勇気を出して人の話を聞いたのに、望んでいた「元気になる言葉」も「壁を突破できるかもしれないヒント」も聞けない上に、自分の批判までされたらそりゃあもう「誰とも話したくない」となるのは当然だと思う。
実は今回ステージ上にいた「語るロックスター」や「おどける演出家」や「熱い旅人」や「朗らかな美容師」のみんなも「誰とも話せない」時間を通ってきた人達だ。
おっくんが和歌山を出た時期に1人も話し相手がいなかった、という話や、中学時代に1人も友人がいなかった柿内君の話なんかもその1例だ。
つまりネアンデルタール人になりたくなくても、「ネアンデルタール人になってしまう時期」ってのが人生にはあるのだ。
感受性が強すぎて「他者の抱えるノイズ」をスルーできる余裕がない時期ほど、人は「ネアンデルタール人」になってしまう。
僕にも「他人は無理」となっていた時期は何度かある。
そういう時はどうすればいいか?
そういう時こそ、昔のコンテンツの中にいる「昔の人」と語ればいいのだ。
文学、絵画、映画、漫画、音楽、その気になれば200年前の人と語ることだってできる。
それは「コンテンツ」の中に凍結された「先代からの遺伝子(ミーム)」だ。
時代の空気に翻弄された人の声が大きくなっている時こそ、これが重要なのだ。
CICADAのテーマはまさに「この部分」にある。
彼ら「昔の人」の発言を調べるのも今は難しくない。「時代」に淘汰されなかった「純度の高い言葉」がそこにある。
そして「その言葉たち」はパワフルだ。
手塚治虫の言葉は40年も僕の中で響いている。
そして、そんな誰とも話せない「ネアンデルタール時代」でも、得られた知識は、後々になって自分を助けてくれる。
ちなみに、今回「まどマギ」の解説で引用したドイツの画家「マックス・エルンスト」の人生は、デビュー出来なくて悶々としていた時期に、八王子の古本屋で見つけた古い美術雑誌で知った。
エルンストはドイツのシュールレアリストだったために、戦争で大変な人生を経験している。
第一次大戦では砲撃兵だったし、フランスに帰化した後は「敵国外国人」として何度も監禁され、アメリカに亡命した人だ。
現代のアニメを観て、エルンストが「石化した森」を描いた後に彼に訪れる過酷な人生を想起できたのも、あの「八王子の古本屋を彷徨っていた時間」があったからなのだ。
確かに「対話」は素晴らしい。「話の通じる人」ってのも、求めていればそのうち出会える。
でも、今が「その時」ではないなら、じっくりと「過去の人たち」と対話すればいい。
おっくんもそうだったし、今回のゲスト志磨遼平なんか、まさに「そういう人」だ。
だから彼らは今「面白い話」ができるのだ。
山田玲司
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平野建太
Written by
ナオキ
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