コラム 2019.01.25

【第199号】シルバニアファミリーを買ってもらえなかった女

山田玲司のヤングサンデー 第199号 2018/8/13

シルバニアファミリーを買ってもらえなかった女

 

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おことわり:このコラムは、ニコニコチャンネル「山田玲司のヤングサンデー」で配信されているメルマガを全文転載してお送りしています。転載期日が2018年4月下旬以降の号は、テキストのみを抜粋・転載しております。

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先日SNSで「どうせ私はシルバニアファミリーを買ってもらえなかった方の女よ!」という投稿を見た。

 

なんてことだ・・・。

 

今の世の中は「シルバニアファミリーを買ってもらえた方の女」と「買ってもらえなかった方の女」に分かれているのか?!

 

分かれて戦争しているのか?!

 

そもそも買うも買わないも「親」が決める事だし、しかも「昔の話」なのでどうにもできない。

ところがこの話、実に根が深い問題でもある。

 

普段は仲良くても、何かの拍子に子供の頃に欲しいものを「買ってもらっていた派」か「買ってもらえなかった派」なのかがわかってしまう時がある。

 

こうなると変に気まずくなる。

 

「こいつ・・あの時に買ってもらったほうのヤツだったのか・・」

 

なんて思う人が必ずいるのだ。

 

同じ仲間だったはずなのに、いきなり「あの頃の敵」にされてしまう「買ってもらえた方」は居心地が悪い。

自分のせいではないのに「甘やかされて育ったヤツ」みたいにされてしまう。

 

とはいえ、自分が「買ってもらえなかった人」だと「買ってもらえた人」が何か許せなくて「あいつらは甘やかされて育ったから、自立できない」とか批判したくなる気持ちも分かる。

 

どちらの派も「過去の経験は自分のためになっている」と思いたいので、それを否定されるとカチンとくるのも当然だろう。

 

「買ってもらえた派」は、買ってもらえたから「優しい人になれて良かった」みたいに思いたいし、「買ってもらえなかった派」は、それがあるから「今の強い自分がある」みたいに思いたい。

 

なので「なんでも欲しいものを買ってもらったから自立できないダメ人間になったんだ」なんて言われたらムカつくし、「欲しいものを買ってもらえなかったから自己肯定感が低くて人に厳しいんだ」なんて勝手に分析されたら「決めつけんな!」となるだろう。

 

更にこの問題を複雑にしているのは、「パソコンや、ゲームを買ってもらえたおかげで、その道に進むきっかけをつかんだ」みたいな人もいるし、「買ってもらえなかったからこそ憧れは消えず、頑張ることができた」みたいな人もいるってことだろう。

 

どっちにしても「極端に与えてもらえなかった何人かの友人」が、その事で苦しんでいたのは知っている。

 

彼らは「自分は欲しいものを全然買ってもらえなかったから、他人が許せないんだと思う」とか「自分がこの世界に求められている感じがしない」みたいな事をよく言う。

 

それにしても「この話」

 

またしても「親は選べない問題」だ。

ちょうど今「ピングドラム」と言う「呪われた親を持つ子どもたち」のアニメの解説をしているのもあって色々考えてしまう。

 

思い出すのが、かなり昔にヤンサンで取り上げた「シシバナザルの話」だ。

観てない人も多いと思うので書きます。

 

取材チームが中国の山奥に暮らす「シシバナザル」の兄弟を追いかけていると驚くべき生態が判明するって話。

 

シシバナザルに2匹の小猿が生まれるのだが、なぜか片方の子猿しか母親に甘えさせてもらえないのだ。

 

もう1匹の子猿は群れからも迫害され、群れの近くで「1人ぼっち」で育つ。

 

そんな「1人で生きていく小猿」は強くなっていく。経験を積みたくましく成長していくのだ。

やがて「母に甘えて育った小猿」も自立の時を迎える。

感動的なのは、この2匹は最終的に協力していく事だ。

 

「孤独」を知る猿と「愛」を知る猿。

それぞれが、それぞれの「武器」を持ち、互いに欠けた部分を補い合って生きていくのだ。

多様性こそが最強の生存戦略である事を見事に表している。

 

そういえば漫画界も「親に何でも買ってもらえた戦前生まれの手塚治虫」と「ろくに何も買ってもらえなかった戦後の漫画家たち」の多様性によって大繁栄を遂げたのだ。

 

女たちよ

 

「シルバニアファミリーを買ってもらえなかった」がくれた「強さ」と

 

「シルバニアファミリーを買ってもらえた」がゆえの「優しさ」で、

 

世知辛い世の中を共に生きていこうではないか。

 

(ゲームとか買ってもらえなかった男子もな)

 

どっちにしても「何も与えてもらえなかった」わけではないのだ。

もしそうなら今生きてはいない。

何しろ生まれたての人間はトイレにも行けないし、ネットも使えないのだ。

 

PS おっくん、久世のメルマガリリーフ、素晴らしかったですね。

今後も時々登場するので、彼らの才能をお楽しみに!

 

山田玲司

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企画編集:山田玲司
平野建太
発  行:合同会社Tetragon
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