【第200号】「いらない国」が生む「いらない文化」
「いらない国」が生む「いらない文化」
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おことわり:このコラムは、ニコニコチャンネル「山田玲司のヤングサンデー」で配信されているメルマガを全文転載してお送りしています。転載期日が2018年4月下旬以降の号は、テキストのみを抜粋・転載しております。
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テレビを着けたら「スクールオブロック」のドラマ版がやっていた。
ジャック・ブラック演じる「ロックバカ」が、バンドをクビになり、間違いで「名門小学校の教師」になって小学生にロックの授業をする、という僕の大好きな映画「スクールオブロック」をシチュエーションコメディにしたものだ。
ジャック・ブラックのやっていた、ロックバカの主人公「フィン」は、少しばかりイケメンの俳優がやっている。
悪くないけど、やっぱり「イケメン」にはこの役は向かない。
ジャック・ブラックの魅力は「イケメン要素」より「いけてない要素」(背が低い、小太り、暑苦しいなど)の方がはるかに上回っているのに「堂々としている」部分なのだ。
世間で言われる「マイナス要素」を堂々とさらけ出してカッコつけると、つまらないイケメンなんかよりはるかに「かっこ良く」見えるのだ。
色々考えながら観ていたら、フィンがこんなセリフを言った。
「子供は大人に頼っていいんだ!」
・・・・・・・・・・・
なんだか、その瞬間に胸の奥を突かれた気がして参った。
そもそも「そういうテーマの映画」だったんで、当たり前なんだけど、やっぱりやられる。
子供が大人に頼れない世界に生きているからだと思う。
子供は大人に指示と説教ばかりされて生きている。
僕が「ピクサー、ディズニー」のコンテンツを観ていて悔しくなる時は、作り手の精神に「大人」を感じる時だ。
もちろん海外の大手のコンテンツも玉石混交で、ひどい作品も多いのだけれど、時々「長い試行錯誤と眠れない夜と愛と喪失、その克服」なんかをしっかりと経験してきた「大人」が作っている作品がある。
凝りまくったCGのハッタリの効いた画面の奥に「まともな大人」がいる。
「インサイドヘッド」や「リメンバーミー」や「ニモ」や「トイストーリー」なんかもそうだし、リンクレーターの1連の作品もそうだ。
何度も思い出すのは、数年前の「マッドマックス 怒りのデス・ロード」が色んな賞を総ナメにした時の事。
彼らは「これは本当に起こりうる未来の話です」と言ったのだ。
受賞が嬉しいとか、みんなありがとう、とかで終わらず「子どもたちにまともな世界を残そう!」と本気で言ったのだ。
こんなもの日本で言おうものなら「出たよ意識高い系」と、ニヒリスト達にネタにされて終わるだろう。
「信用できない大人」が親や教師や政治家なんかに多すぎて、この国では「大人な行動」を始めから拒否する空気が支配している。
1部のアニメや漫画には「正しい大人」が出てきたりもするのだけれど、今の作品の多くは「大人」を拒否し「閉じた心」が生んでいるものが多い。
この状況にずっとうんざりしてきたのだけれど、最近は更に悲しい情報が入ってくる。
国際会議に出ている環境チームの人たちの話を聞くと、世界の主要国はとっくに「環境保護のための具体的なイノベーション」にシフトしていて、「化石燃料、原発の是非」「地球温暖化懐疑論」なんかの議論はとっくに終わっていると言う。
その中で日本はとっくの昔に相手にされなくなっているらしい。
おそらくは「アメリカの犬」か「いらない国」にされているのだと思う。
そんな国で生まれる文化ってのに意味があるのだろうか?
そんな事をずっと考えている。
とはいえ。
「まともな大人が消え、考える事を放棄した大人の支配する世界」みたいな状況は、今後の世界中に蔓延していくのではないだろうか、とも思う。
経済発展で「高度なインフラ」の引き換えに失うのは「まともな心」「まともな大人」だ。
豊かで残酷な競争社会が支配していく時代に、多くの国が「日本的な病」にかかるだろう。
そんな時に、寄り添ってくれるコンテンツは「健康なディズニー作品」より「不健康なジャパニメーション」かもしれない。
もちろん、その「薬」にはいくつかの深刻な「福作用」もあるが、その件に関しても僕らは熟知している。
勝者が生むのが「エンタメ」で、敗者が生むのが「文学」だとすると、大人の消えた「いらない国」日本から「文学という救済の薬」が生まれる可能性はある。
いや。すでに生まれている。
病というものが「悪いもの」とは限らないのだ。
山田玲司
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平野建太
Written by
ナオキ
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